国際セミナー「海面上昇と気候変動適応」開催
2025年2月19日、モルディブのCrossroads Maldivesで、公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団(日本GIF)などが主催する国際セミナーが行われました。本セミナーのテーマは、気候変動への適応策と移住政策に焦点を当て、小島嶼国の持続可能な解決策を模索するために、多数の専門家が集まりました。
セミナーの目的
モルディブやその他の小島嶼開発途上国では、海面上昇や気候変動により深刻な影響を受けています。今回のセミナーは、政策立案者や研究者、実務者が一堂に会し、これらの課題に対して持続可能な解決策を探ることが目的でありました。
開会挨拶
セミナーは、SPF社会イノベーションプログラムディレクターの松野文香氏による挨拶からスタートし、その後、日本国駐モルディブ大使の石神留美子氏が続きました。モルディブの気候変動特使であるアリ・シャリーフ氏も挨拶し、共通の認識と協力の重要性を強調しました。
プレゼンテーションの内容
1. 中山幹康氏による発表
中山氏は、気候変動適応に関する長年の研究の成果を発表し、「留まる権利」と「移住する権利」のバランスを重要視しました。人工島「フルマーレ」の事例を取り上げ、文化的配慮と物理的適応の両立について提言しました。
2. イブラヒム・モハメド氏の報告
モルディブにおける海岸侵食問題への対策状況を示し、コミュニティの維持と物理的インフラの整備がいかに重要かを強調しました。特に、高齢者の感情的な障壁が移住政策に影響を及ぼす様子も触れられました。
3. アフメド・アスラム氏の調査結果
フルマーレへの移住者298名を対象に行った調査を基に、移住の動機について議論しました。新しい住宅、医療、教育へのアクセスが移住の励みになっている一方、文化的な適応には課題があることが確認されました。
4. 前川美湖氏の研究
フルマーレへの自主的移住の動機を探る研究結果を発表し、雇用の機会や安心感が移住を促す一方で、文化の喪失への懸念も存在することを指摘しました。
パネルディスカッション
参加者の意見も交えながら、移住と文化保存の重要性、経済支援、そして環境に配慮したインフラの整備について議論が行われました。また、国際的な連携の強化の必要性も再確認されました。
結論
今回のセミナーでは、気候変動への対応と移住政策に関する多様な視点が共有され、持続可能な取り組みを進めるためには文化的および経済的な側面を包括することが不可欠であるとの理解が得られました。
最後に、MNU副学長のアーシャ・シェヘナズ・アダム氏が閉会挨拶を行い、参加者へ感謝の意を表し、今後のさらなる連携の必要性を訴えました。
本セミナーは、65名の参加者により活気ある議論が展開され、気候変動に立ち向かうための意義深い場となりました。