岡山大学で実現した新しい不整脈治療法
国立大学法人岡山大学は、新型の血管外植込み型除細動器(EV-ICD)を用いた不整脈治療の保険適用を発表しました。これにより、心臓に触れずに不整脈から患者を守る新しい治療法が登場し、これまで以上に多くの患者に恩恵をもたらすことが期待されています。
保険適用の背景と手術の実施
EV-ICDは、3月1日から保険適用となり、岡山大学病院を含む国内の医療機関にて2025年3月3日に初めての手術が実施されました。岡山大学病院では、その後、2名の患者にこの新しい治療法が施行されています。この新型除細動器は、従来の植込み型除細動器(ICD)よりも合併症のリスクが少なく設計されています。
一般的に、ICDは血管内にリードを通し、心臓に固定する方式が取られています。この方法は、長期使用においてリードの断線や血管閉塞、感染などのリスクが存在していました。しかしEV-ICDは、リードが血管の外側に位置するため、不整脈を感知しやすく、感染のリスクを軽減します。
患者の生活の質(QOL)を向上するデバイス
さらに、このデバイスはコンパクトな設計でありながら、バッテリーの耐用年数はなんと10年以上。これにより、長期間にわたる治療が必要な患者においても、生活の質を大きく損なうことなく、その後の生活を維持することができるのです。特に若年層の患者にとっては、非常に有用な選択肢となります。
西井准教授のコメント
この新型除細動器の導入に関して、岡山大学病院の西井伸洋准教授は、「治験として2023年に日本で初めてこのデバイスを植え込む手術を実施しました。今回の保険適用により、これまで以上に多くの患者がこのデバイスによる治療を受けられる機会が増えるでしょう」と述べました。
また、「痛みが少なく、長期間使用できることから、患者の心身にかかる負担を大幅に軽減できることが期待されています」とし、今後の治療の広がりに期待を寄せています。
今後の展望
岡山大学病院でのEV-ICDに関する手術は、期待された通り8件行われており、患者の経過も順調。さらなる治療の普及に向けて、多くの患者の選択肢として重要な役割を果たすことが期待されています。心臓に関する新たな治療法が保険適用となったことは、医療界においても革新的な進展と言えるでしょう。
今後も岡山大学を中心に、この新しい治療が多くの患者に届けられることを願ってやみません。