はじめに
ローム株式会社は、今春、高耐圧GaNデバイス向けとして新たに絶縁ゲートドライバIC「BM6GD11BFJ-LB」の量産を開始しました。この製品は、600VクラスのGaN HEMTに最適化されており、その特性を最大限に引き出すために開発されたものです。電力管理や小型化が求められる今日の市場において、どのような価値を提供できるのか、詳細を見ていきましょう。
GaNデバイスとその重要性
GaN(窒化ガリウム)デバイスは、次世代のパワーデバイスとして注目されています。特に省エネの観点から、モーターや電源は全世界の電力消費量の97%を占めると言われており、その効率を向上させることが急務です。新材料を用いたデバイスは、より高効率で高速な動作が可能で、特に正確な制御が求められるアプリケーションにおいて重要な役割を果たしています。
新製品の特長
「BM6GD11BFJ-LB」は、独自のオンチップ絶縁技術を採用することで、寄生容量を低減し、最大2MHzの高周波駆動を実現しています。この技術により、GaNデバイスの優れた高速スイッチング特性を引き出し、アプリケーションの省エネ化が促進されると同時に、周辺部品の小型化にも貢献します。
さらに、コモンモード過渡耐圧(CMTI)は150V/nsを達成し、従来品比で1.5倍に向上しました。これは、スイッチング時に発生する急激な電圧変動に対する耐性を高めることで、安定した信号伝送を可能にします。また、最低パルス幅を従来品より33%短縮し、オントン時間を最小65nsにすることで、効率の高い運用が可能です。
利用シーンの多様性
この新型ICは、主に以下の用途での利用が進むことが期待されています。
- - 産業機器: PVインバータ、電力貯蔵システム(ESS)、通信基地局、サーバー、産業用モーターなどの電源。
- - 民生機器: 白物家電、ACアダプタ(USBチャージャー)、PC、テレビ、冷蔵庫、エアコンなど、幅広い家庭用機器。
開発の背景
エネルギー消費が年々増加する中、省エネ対策は世界共通の課題です。ロームは、これまでのシリコン半導体やSiC向けの絶縁ゲートドライバICの開発で得たノウハウを活かし、GaNデバイス専用のものを開発しました。今後もGaNデバイスと共に、ゲートドライバICの提供を行い、アプリケーション設計を容易にすることで、業界全体への貢献を目指します。
まとめ
ロームの新しい絶縁ゲートドライバIC「BM6GD11BFJ-LB」は、GaNデバイスの特性を活かして効率的な動作ができるように設計されています。2025年3月から量産を開始し、サンプル価格は600円(税抜)で販売される予定です。今後も省エネルギーや効率化を追求する中で、このような技術革新がどのように市場に影響を及ぼすのか、期待が高まります。