医学生物学研究所と熱帯病感染検出キット
医学生物学研究所(MBL)は、JSRグループの一員として、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の支援を受け、顧みられない熱帯病(NTDs)の感染検出キットの開発プロジェクトに挑んでいます。このプロジェクトの目的は、医療へのアクセスが困難な地域でのNTDs撲滅の基盤を構築することです。具体的には、集団薬物投与(MDA)の必要性を評価し、MDAの実施前後での感染率の動向を把握、さらには病気が排除された地域での感染の監視と早期発見を目指しています。
プロジェクトの内容
本プロジェクトでは、特に「ラテラルフローアッセイ」という簡便な検査手法を用いた感染検出キットの開発が進められています。この手法は常温保存が可能で、迅速に結果を提供することができるため、現地での使用に適しています。MBLは、このキットに必要となる抗原や抗体の開発と生産を手掛ける役割を果たしており、長年にわたる免疫検査薬の研究開発で培った技術と厳格な品質管理体制を駆使して、プロジェクトに貢献しています。
パートナーシップの強み
製品開発のパートナーであるDDTD(Drugs & Diagnostics For Tropical Diseases)は、キットの開発を担当し、Big Eye Diagnosticsが製造を行います。さらに、DDTDが構築する国際的な協力体制には、長崎大学熱帯医学研究所(NEKKEN)、ケニア医学研究所(KEMRI)、野口記念医学研究所(NMIMR)、カーター・センターが参加しており、臨床開発や現地の医療環境に最適な使用法の確立に取り組んでいます。
顧みられない熱帯病(NTDs)について
熱帯病は世界中で、特に医療アクセスが不十分な地域の人々に大きな影響を及ぼしています。以下は、MBLが開発を進めている3種類のNTDsについての概要です。
オンコセルカ症(River blindness)
- - 対象地域: サブサハラアフリカ
- - 病原体: 回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)
- - 推定患者数: 1800万人
- - 主な症状: 失明、皮膚のかゆみ、皮膚変性
- - 使用目的: MDA前の地域把握
住血吸虫症(Schistosomiasis)
- - 対象地域: サブサハラアフリカ、一部の中東・南米地域
- - 病原体: マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)
- - 推定患者数: 2億5千万人
- - 主な症状: 消化器系疾患、泌尿生殖器系疾患
- - 使用目的: MDA後の監視、モニタリングと評価
トラコーマ(Trachoma)
- - 対象地域: 北部中部アフリカ、中南米、オーストラリア
- - 病原体: Chlamydia trachomatis
- - 推定患者数: 200万人
- - 主な症状: 失明
- - 使用目的: MDA終了に向けた監視
社会への貢献
MBLは、確かな技術基盤を活かしながら、プロジェクトを通じて医療インフラが脆弱な地域への支援を強化していきます。また、自社の診断薬開発の経験を背景に、グローバルヘルスの向上に寄与する活動を持続的に推進する考えです。本プロジェクトが成功すれば、NTDsの撲滅に向けた新たな道筋が開かれ、より多くの人々が健康で豊かな生活を送れるようになることが期待されます。
本リリースに関するお問い合わせ先は、株式会社医学生物学研究所までお願いします。