皮膚常在菌バイオフィルム洗浄機構の研究成果
世界最大の化粧品企業ロレアルが、日本における研究開発部門であるロレアル リサーチ&イノベーション ジャパン(R&Iジャパン)と日光ケミカルズと共同で、皮膚常在菌バイオフィルムの洗浄機構についての研究を行いました。この研究の成果は、2025年に開催される第63回油化学会年会と第76回コロイドおよび界面化学討論会で発表される予定です。
皮膚常在菌のバイオフィルムとは?
バイオフィルムとは、微生物が自身の分泌物で形成する強固な膜のことを指します。この膜は、アトピー性皮膚炎やにきびなどの皮膚疾患の炎症を悪化させる要因となるため、皮膚の健康を保つためにはバイオフィルムの除去が重要です。しかし、バイオフィルムは様々な微生物が共生し、薬剤の浸透を妨げるため、容易には除去できません。
研究のアプローチ
研究チームは、シリカ基板の上に皮膚常在のアクネ菌によるバイオフィルムを形成し、洗浄液を使用してその効果を実験しました。洗浄液を基板に流すことで、バイオフィルムの残存量を水晶振動子マイクロバランス(QCD-M)で測定したところ、機械的なせん断流がない場合は洗浄効果が見られませんでした。
一方で、イオン性合成界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、バイオサーファクタントのラムノリピド(RL)を使用した場合、流速の増加に伴い洗浄効率がアップし、特に20ml/sの流速ではほぼ完全にバイオフィルムが剥がれました。これに対して、非イオン性合成界面活性剤のポリオキシエチレンソルビタンモノドデカノエート(Tween 20)は、流速に関わらず効果が薄かったことが分かりました。
新たなスキンケアの可能性
また、皮膚常在菌である黄色ブドウ球菌のバイオフィルムをリン脂質で覆った基板で実験を行い、リン脂質の被覆により洗浄効率が向上することが確認されました。この結果は、リン脂質がバイオフィルムの除去を促進する可能性があることを示しており、今後はリン脂質を利用した新しいスキンケア製品の開発への道が開けるかもしれません。
研究機関の紹介
ロレアル リサーチ&イノベーション ジャパンは、1983年に研究開発を開始し、現在は川崎市に拠点を置いています。この研究機関は、200名以上の研究員が在籍し、日本文化や歴史を深く理解しながら様々な化粧品の開発を行っています。代表的なブランドには、ランコム、シュウ ウエムラ、キールズなどがあり、それぞれに高い技術力を誇ります。
今回はロレアルと日光ケミカルズの共同研究の成果を紹介し、今後の研究開発や新製品に期待がかかります。