EY Japanによる内航海運業の調査開始の背景
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EYSC)が、国土交通省の指導のもと、内航海運業における商慣習と改善事例に関する実態調査を開始した。この調査プロジェクトは、内航海運業界の生産性向上や船員の働き方改革、取引環境の改善を目的としており、非常に重要な取り組みとされている。
内航海運業の重要性と課題
内航海運業は、国内貨物の輸送において非常に大きな役割を果たしており、トンキロベースで44%の市場シェアを有している。特に重要な産業基礎物資である鉄鋼や石油製品、セメントなどの輸送においては、そのシェアが80%に達する。そのため、内航海運業は国民生活や経済活動を支える根幹をなすライフラインである。
しかし、内航海運業界にはいくつかの課題が存在する。事業者の99.7%が中小企業で運営されており、事業基盤が脆弱であることに加え、業界内の構造が非常に複雑で、荷主、オペレーター、元請けと二次、三次受けといった多層的な関係が形成されている。このような構造は、商慣習や取引環境の透明性を損なう要因となっている。
改正内航海運業法の施行とその影響
令和4年4月に施行された改正内航海運業法により、荷主はオペレーターの法令遵守を配慮する義務が課され、オペレーターは船員の過労を防止する対策が求められることになった。また、荷主とオペレーター間、さらにはオーナーとオペレーター間での契約書面の交付が義務化され、取引環境の透明性向上が進められている。これらの改正は業界の取引環境の改善に寄与するものであり、更なる進展が期待されている。
EYSCの取り組みと期待される成果
EYSCは、海運業に関する商慣習において、企業や官公庁、テクノロジー企業と連携しながら、業界全体を俯瞰した支援を行える体制を整えている。特に「2024年問題」と呼ばれる海運・物流業界の課題に対して、豊富な支援実績があることから、本プロジェクトを推進する立場で参与することに決定した。
EYSCのサプライチェーン&オペレーションズパートナー、志田光洋氏は、「昨今の物流業界では担い手不足が深刻化しており、改善の余地が多い」と述べ、業界全体での取り組みの重要性を強調した。個々の企業だけでは解決できない課題に対し、業界全体の協力が不可欠である。新たなガイドラインの策定に繋がるこの取り組みは、業界全体の進歩を促す重要な活動となるだろう。
この調査の結果をもとに、内航海運業における商慣習の実態を把握し、ガイドラインの更新や改善事例の共有を通じて取引環境の向上を目指す。その結果、内航海運業界全体が抱える課題の解決に寄与することが期待されている。
EYのビジョンと社会的貢献
EYは「Building a better working world」を企業の存在意義として掲げ、クライアントや社会のために長期的価値を創出することを目指している。150カ国以上に展開するEYは、データとテクノロジーを駆使して、クライアントの成長や変革を支援しており、その使命はさらに多岐にわたる。EYSCの取り組みは、社会全体に貢献するための一環であり、より良い社会の実現に向けた一歩となるだろう。
このように、EY Japanの内航海運業に関する調査は、業界の未来に向けた重要な活動であり、生産性の向上や働き方改革に向けた取り組みが期待される。