近年の医療機関を取り巻く厳しい現状
近年、医療機関はサイバー犯罪の標的になりやすく、特にランサムウェア攻撃が深刻な問題となっています。これにより一部の病院では業務が数週間も停止する事例も報告されています。このような状況を受けて、厚生労働省は医療機関に対して事業継続計画(BCP)の策定を義務づけています。東京都の北多摩南部医療圏を支える基幹病院である武蔵野赤十字病院も例外ではなく、これまでの個別なバックアップ体制の限界を認識し、より統合的なデータ保護の必要性を痛感していました。
課題と新たな取り組み
武蔵野赤十字病院では、特に重要な患者情報である電子カルテや診療データ、医療画像を守るために、サイバー攻撃やその他の障害に対しても迅速な復元が可能なバックアップ環境の必要性が高まっていました。既存のシステムでは十分なデータ保護が実現できないことが課題として浮上し、その解決策の模索が始まりました。
CohesityとHPEのソリューション導入
そのような中で、病院は複数のデータ保護ソリューションを比較し、CohesityのDataProtectをHPE ProLiantサーバー上に導入することを決定しました。この選定の理由は、以下の特長に基づいています。
- - イミュータブルなバックアップ:改ざんが不可能な状態でデータを保護し、ランサムウェアからの影響を受けません。
- - AIによる脅威検出:バックアップデータ内の潜在的なリスクを可視化する機能があります。
- - ストレージ効率の最適化:重複排除や圧縮技術を使用し、コストを抑制します。
- - 迅速なリストア環境:容量制限がなく、大規模なデータ復旧に迅速に対応できる環境を提供します。
- - 高い拡張性:次世代のEMRシステムやクラウドアーカイブとの連携が可能です。
これにより、同院では100TBを超える患者データや運用システムを取り込み、27の部門と80台以上のサーバーを含めた統合バックアップが実現しました。
実際の成果
Cohesityの導入後、同院では毎年実施されるBCP訓練で500GBのデータ復旧を20秒で達成しました。システム全体の復旧時間も約15分に短縮され、必要な時に迅速に診療業務を再開できる体制が整ったのです。インターフェースの直感的な設計により、IT部門のスタッフは自らの手でデータリストアを迅速に行えるようになり、対応スピードと自律性も向上しました。また、データの重複排除と圧縮によって、バックアップデータの容量要件を最大70%削減し、ストレージの効率化やコスト削減にも成功しました。
今後の展開
武蔵野赤十字病院は、今後もCohesityを活用し、次世代EMRシステムのバックアップ基盤としての活用を進める他、データのクラウドアーカイブや他の赤十字病院とのデータ共有についても検討しています。
「医療機関にとってサイバー攻撃への対策は重要です。今回の技術導入によって、万一の事態にも迅速に診療が再開できる環境が整いました」と、医療情報管理課の岡田課長は語っています。また、Cohesityの金光社長は、医療機関のデジタル化と安全な医療サービスの実現に対するコミットメントを強調しました。
武蔵野赤十字病院とCohesity
武蔵野赤十字病院は、1949年に設立され、がん治療や母子医療、三次救急医療などを提供している重要な医療施設です。Cohesityは、AI技術によるデータセキュリティと管理のリーダーで、12,000社以上の顧客にサービスを提供しています。今後も、医療機関が直面する課題に対し、柔軟なデータ保護と管理基盤を提供することで、日本の医療機関のデジタル化に寄与していくことでしょう。