EV放電を活用した新しい都市インフラの可能性
新電元工業株式会社が東京電力グループと共同で進めた実証試験がメディアでも注目を集めています。この試験では、電気自動車(EV)の放電機能を活用して、機械式立体駐車場を動かすことに成功しました。停電時に車両の出庫ができなくなるという都市部の課題を解決するための重要なステップとなります。
機械式立体駐車場の稼働実証
今回の実証試験は、特に重要な機能を持つ三相電力供給を用いて行われました。新電元工業が開発した10kW出力のV2Xシステム実証機を使用し、EVから機械式駐車場への電力供給を行います。実際の試験では、最大負荷時にも約3kVAの大電力をEV電池から供給し、駐車場の駆動に成功しました。今回の試験に使われたパレット型の機械式立体駐車場は、電力負荷が高い設備であるため、この成功は他の駐車場システムにとっても有望な結果となります。
災害時の「ブラックスタート機能」
また、この実証試験では、停電時でもV2X装置が起動できる「ブラックスタート」機能も評価されました。この機能には2つの方式が搭載され、起動用電源の取得方法が多様化されています。一つは充放電コネクタから電源を取得する方法、もう一つはEVのシガーソケットからの電源取得です。これにより、さまざまな車両でもこのシステムが利用できる可能性が広がります。
新たな産業用V2Xシステムの展望
新電元が開発したV2Xシステムは、家庭用だけでなく産業用設備でも活用できる高いポテンシャルを持っています。家庭用の単相交流ではなく、産業用としての三相10kWクラスの放電性能を備えており、公共設備の駆動に非常に適しています。EVのバッテリーから直接三相交流電力に変換する技術は、新たなエネルギー活用の可能性を秘めています。
災害時にも迅速な回復を
停電時におけるビルや施設の機能復旧は、とても重要です。今回の実証試験により、EVが移動手段としてだけでなく、公共施設の駆動源としての役割を果たす可能性が示されました。特に、地域の太陽光発電から充電できるEVは、持続可能なエネルギーの地産地消を促進する要素でもあります。
新電元工業は、こうした実証試験を通じて災害に強い都市インフラを構築することを目指しています。EVを有効活用すれば、災害時にも公共施設の主要機能が迅速に復旧し、地域の安全を確保できます。今後もこの研究が進展し、都市と電動モビリティの新たな関係が築かれていくことに期待が寄せられています。
新電元工業の取り組み
新電元工業は、1949年に設立されたグローバル企業で、主にパワーエレクトロニクス製品を提供しています。特に電源システム機器の開発に特化しており、最新のEV技術に対応した商品の開発にも力を入れています。今後も持続可能な社会を目指し、再生可能エネルギーの利用促進に貢献していくことでしょう。