北越後の造り酒屋、菊水酒造が建築文化賞を受賞した理由

菊水酒造が受賞したKIKUSUI Renewal Planの全貌

最近、北越後を代表する酒蔵、菊水酒造がその新たなリニューアル計画「KIKUSUI Renewal Plan（KRP）」により、北陸建築文化賞で高い評価を受けました。このプロジェクトは、地域の自然や文化を大切にし、持続可能な酒蔵を実現することを目的としており、今後の酒造りに新たな風を吹き込む役割を果たしています。

KIKUSUI Renewal Planの背景と目的

KIKUSUI Renewal Planは、2012年から2017年の間に菊水酒造の全体設計を見直したプロジェクトです。菊水酒造は、1969年に現在の場所に移転し、以来、数方面の増改築を経てきましたが、その結果導線が複雑になっていました。
このような状況に対処するために、災害耐性を高めつつ、高品質な商品を安定して生み出し、変わり続ける市場に対応することがプロジェクトの重要なミッションに据えられました。

受賞の理由と評価されるポイント

プロジェクトの設計は、株式会社梶浦暁建築設計事務所をはじめとする専門家たちによって行われ、「テロワールの建築」として評価されました。施主との対話から生まれたこの評価は、伝統的な酒造りを支える文化を育む場所としての重要性を示しています。特に、設計者は経験をより活かし、製造ラインの再設計を行ったことが注目されています。

特に評価されているのは、地域性を強く意識した建築デザインです。二王子岳を望む仕込み室や、周囲の風景との調和を図ることで、自然と文化の共生を試みる姿勢が感じられます。

具体的なリニューアル内容

菊水酒造の約一万坪の敷地には、仕込み蔵や貯蔵棟、製品棟など多岐にわたる施設が設けられ、美しい北越後の景観と調和を図る設計が施されています。建物の高さを抑え、素材の選定に工夫を凝らすことで、地域に溶け込む存在感を持たせています。

中でも、特に注目されるのが貯蔵棟の改装です。これまで散在していたタンクと濾過場を一箇所に集約し、作業効率を向上させたことで、年中安定した低温管理が可能となりました。また、二王子蔵では、歴史と地域の象徴である二王子岳からインスパイアを受けた仕込み室が設置され、作業環境も魅力的なものへと昇華しています。

社員の健康と文化を育む施設の充実

新たに設けられた菊水スペース踊りは、社員の福利厚生を考慮した設計となっており、直接的な製造工程から離れてリラックスできる空間を提供しています。また、地域イベントやミーティングが行える大規模なスペースも備えられており、社員同士が交流する機会を積極的に提供しています。

さらに、酒造施設を再構築した甘酒生産施設あま蔵では、創業以来の知識と技術を活かし、米麹や酒粕を使用した新しい商品づくりに挑んでいます。これにより、顧客の多様なニーズに応えることが可能になっています。

今後の抱負

KIKUSUI Renewal Planを経て、菊水酒造は新たな経営理念を掲げ、地域に根ざしたモノづくり・コトづくりを推進する姿勢を明確にしています。今後も、地域の人々の「健康」「憩い」「楽しみ」に貢献する酒造りを続けていくことが、菊水酒造の誇りであり使命となるでしょう。受賞を受けて、さらなる発展を遂げる菊水酒造から目が離せません。