佐々井秀嶺師の新著『闘う菩薩道』の刊行
2025年12月5日、サンガ新社から出版された『闘う菩薩道:我が使命いまだ尽きず』は、インドでの仏教復興に尽力してきた佐々井秀嶺師の半生を、彼自身の視点から語った初の単行本です。本書は、長らく絶版となっていた過去の著書を統合し、新たな書き下ろしを加えて生まれた決定版です。特に日本地図には、師とゆかりのある寺院が紹介されており、読者にとって興味深い内容となっています。
インドにおけるカースト制度とその影響
インドでは、紀元前16世紀から続くカースト制度が、社会の底辺にいる不可触民を苦しめています。1950年に制定されたインド共和国憲法で一応の平等が謳われたものの、カースト差別は依然として強固であり、不可触民は全人口の14%を超える存在慣れています。彼らは職業や生活の場において厳しい差別を受けており、この状況を何とか変えようと取り組んでいるのが、佐々井秀嶺師などの仏教指導者たちです。
アンベードカルと仏教復興運動
インドの不可触民解放運動は、法的に重要な役割を果たしたのがビームラーオ・アンベードカルです。彼は不可触民自身でありながら、仏教の教えが差別を否定し、真の平等を促進することを確信しました。1956年に開催された大改宗式では、数十万人のヒンドゥー教徒が仏教に改宗しました。これはインドにおける仏教復興への新たな一歩となり、今なお続いています。
佐々井秀嶺師による仏教復興の継承
佐々井秀嶺師は、アンベードカルの意思を受け継ぎ、不可触民のために仏教の復興に尽力してきました。彼は政治の舞台でも活躍し、2003年にインド政府の少数者委員会の仏教代表に就任しました。日本での知名度を上げたのは、2004年に放送されたドキュメンタリー番組で、その影響力は多方面に及びました。例えば、IT起業家の小野裕史氏は、佐々井師のもとで出家し、大きな話題を呼びました。
新著『闘う菩薩道』が伝えるメッセージ
『闘う菩薩道』には、佐々井秀嶺師の苦悩した青年時代から、インドでの仏教復興の運命的な道のりが描かれています。大菩提寺管理権の奪還闘争や龍樹の遺跡の復興に向けた努力など、彼の思いが色濃く反映されています。これは、仏教が現代においても関連性を持つ宗教であるとの認識を深めさせる内容です。また、不可触民の解放をテーマにする際には、彼の言葉が第一に参照されるべきでしょう。
佐々井秀嶺師が描く生きざまと情熱が、今回の新著を持ってさらに多くの人々に届くことを期待しています。彼の生涯と信念は、宗教や人権を問わず、多くの人々に影響を与えるに違いありません。この本は、インドの仏教復興を考えるうえでの重要な指針となることでしょう。