温暖化を子どもたちの目線で伝える絵本
地球温暖化というテーマは、時に難解に感じられることがあります。しかし、絵本『たった2℃で…地球の気温上昇がもたらす環境災害』では、そのテーマを子どもたちの目線でわかりやすく描いています。著者キム・ファンさんによるこの作品は、温暖化の影響を魚やウミガメ、サンゴ礁といった身近な生き物を通して伝えています。
あらすじ
物語は、体温が2℃上昇するだけで我々人間が如何に大変な状態になるかに焦点をあてています。作中では、海水温が上昇すると魚たちが生き延びるために移動を余儀なくされる様子や、ウミガメの性的決定が温度によって影響を受けることを紹介。これにより、地球の気温上昇が生き物に与える大きな影響を子どもたちに直感的に理解させるのです。
生き物の選定とその意味
キムさんは、温暖化について絵本を執筆する際、特に生き物の選定に悩んだと語っています。「ホッキョクグマがかわいそう」というパターンではなく、もっと身近な動物に焦点を当てようとした結果、ウミガメやアザラシ、さらには身近で子どもたちの生活にも登場する魚たちのストーリーが展開されることになりました。このアプローチで、子どもたちは温暖化が遠い国の話ではなく、自分たちの日常にも影響を及ぼすことを理解することができるのです。
絵本制作の過程
『たった2℃で…』は、絵と文章が並行して進められたユニークな制作過程を経ました。キムさんと画家チョン・ジンギョンさんは、一緒に作品のコンセプトを練り、どの場面にどのような生き物を描くかや色合いについて詳細に打ち合わせを行いました。これにより、文章で伝えきれない生き物の美しさや複雑さが絵によって強調され、相乗効果が生まれたのです。
特にサンゴ礁の場面では、多様な生き物が描かれ、豊かさを感じさせることに力を入れたといいます。キムさんは、環境の変化により生き物たちが減っていく未来を想起させ、「かつて花々と魚たちが集まっていた地点を、現在はどのようにして見つけられるのか?」という問いを視聴者に投げかけるのです。
ウミガメの温度依存性とその影響
ウミガメがオスとメスを産む際、その性別が温度によって決まることを知ったキムさんは、それを本作に取り入れることが必要だと思いました。温暖化が進行することで、メスのウミガメが優勢になるケースが増加しているというのは、科学的にも重要な問題です。読者は、この事実に触れることで、より深く地球温暖化の現実を認識することができるのです。
子どもたちへのメッセージ
キムさんはこの作品を通じて、特に子どもたちには「温暖化を他人ごとにせず、自分ごととして捉えてほしい」と訴えています。地球温暖化は非常に大きな問題であり、彼らの将来に直接的に影響を及ぼすテーマです。この絵本を通じて、子どもたちが自ら考え行動するきっかけとなることを期待しています。彼らが持つ力が未来を変える鍵であると信じているのです。
結論
絵本『たった2℃で…』は、温暖化の危機を子どもたちが理解し、自らの生活に生かす手助けとなる有意義な作品です。読者がこの物語を通じて未来について考え、自分たちの行動を変えるきっかけとなることを願っています。
この絵本は2025年度の「⻘少年読書感想⽂全国コンクール」課題図書にも選定されており、ますます多くの子どもたちにそのメッセージが届くことを期待しています。