京王電鉄とNōka.AIが手掛ける養殖革新
京王電鉄株式会社とNōka.AI, Inc.は、2023年7月8日から日本初の「生物学的推論 AI」を活用した奥多摩やまめの養殖最適化プロジェクトを開始しました。このプロジェクトは、奥多摩やまめの成長促進、飼料の効率化、品質の安定化を目的としており、先進的な顧客向けの研究を通じて日本の養殖業界に新たな風を吹き込もうとしています。
京王電鉄のオープンイノベーションプログラム
京王電鉄では、社員のアイデアを起点にした新規事業の開発を進めるオープンイノベーションプログラム「My turn」を推進しています。このプログラムの一環として、2026年3月に京王プラザホテル八王子の施設を利用してアクアポニックス事業を開始しました。この取り組みは、「ホテルで育て、ホテルで味わう究極の地産地消」をテーマに、奥多摩やまめやクレソンを育て、地元の飲食店に供給することを目指しています。
奥多摩やまめは、その品質の良さと希少性から、料理人や美食家の間で特に注目されています。しかし、この高付加価値な食材を安定的に供給するためには、科学的な手法を用いて養殖のプロセスを捉え、生産の効率性と品質安定を図ることが必要です。
Nōka.AIの生物学的推論AIによる支援
Nōka.AIは、急増するタンパク質需要に応じて水産業を革新することを目指して設立されたディープテック企業です。特に、日本の水産業は数兆円規模の重要な産業であり、漁業は食文化に欠かせない存在です。しかし、養殖現場では長年にわたり経験と感に基づいた飼料設計や成長管理が行われてきました。これをAI技術によって科学的に支えることが、Nōka.AIの目指すところです。
Nōka.AIは、膨大な生物学的データを解析し、エビデンスに基づいた飼料設計を行うことで、魚の成長を最適化する手法を提供します。このプロジェクトによって、奥多摩やまめの養殖における成長や品質に影響を与える要因を体系的に把握し、現場の操作を科学的に支援することが期待されています。
プロジェクトの具体的な取り組み
本プロジェクトでは、「何を食べさせるか(飼料)」、「どんな環境で育てるか(養殖環境)」、「いつ収穫するか(品質予測)」の三つの課題にAIを利用して取り組みます。
1.
飼料の最適化 では、Nōka.AIが魚の代謝データを分析し、実際に成長や品質に影響を與える栄養素を特定します。これにより、従来の経験則に頼らない飼料設計が可能になります。
2.
養殖環境の最適化 では、水温や酸素量、pH、養殖密度などの環境パラメータについてのデータを解析し、成長サイクル全体を通じた動的な最適化を図ります。
3.
品質予測 では、分子・代謝データをもとにバイオマーカーを構築し、事前に成長性や品質を予測できるようにします。これにより、従来の事後管理型養殖から、予測に基づいた事前の最適化へと移行することを目指します。
このプロジェクトは2026年7月から9月の間に実施される予定で、5つのフェーズに分けて段階的に推進されます。
今後の展望
今後、京王電鉄とNōka.AIは、本プロジェクトをもとに養殖業界におけるデータ活用と科学的アプローチの重要性を広め、奥多摩やまめの生産の安定化を進めていきます。また、飲食店やシェフが「確実に手に入る食材」として奥多摩やまめを選ぶことができる環境を整えることで、その価値をさらに高め、京王沿線から新たな食文化を創出することに貢献していくことでしょう。