現代台湾文学を象徴する作品『地下鉄駅』が日本上陸！

現代台湾文学の新たな扉を開く『地下鉄駅』

2025年10月28日、台湾の著名作家である何致和（か・ちわ）氏の長篇小説『地下鉄駅』が、日本で発売される。現代台湾文学の基盤を支える彼の作品は、その深いテーマ性と巧みな物語展開で注目を浴びており、本書も例外ではない。

魅力的なストーリーの背景

本作は、台北の地下鉄駅を舞台に、人生につまずいた人々の生や死に焦点を当てる。地下鉄の職員である主人公、葉育安（よう・いくあん）は、45歳、思春期の娘と認知症の母親との生活を持っている。優柔不断で消極的な彼が直面するのは、自殺防止プロジェクトの任務。このプロジェクトでは、誰もが抱える深刻な問題を解決しようと奮闘している。

自殺クライシスへの取組み

各章の冒頭には、自死へ向かう人々の視点が挿入され、リアルな悩みや痛みが浮き彫りにされる。サラリーマンの横領、中学生の失恋、老齢の持病、そして周囲から羨まれるも生きる気力を失った女性など多様な人生が描かれ、読者は共感しながら物語に引き込まれる。

葉育安は、職場の人々とのやり取りや試行錯誤を重ね、自殺を思いとどまらせるためにヒーリングミュージックを流したり、啓発活動を行ったりするも、果たしてそれが成功するのかは不透明。このような現代社会の矛盾や人々の苦悩を前に、育安はどう立ち向かうのか。

文学賞の受賞歴

本書は、2022年に台湾文学賞金典賞をはじめ、多くの権威ある文学賞を受賞している。何致和氏の作品は、これまであまり触れる機会がなかったが、本書を通じて台湾の現代文学に触れるチャンスが提供された。彼が描く中年男性の微妙な心情と、公共交通機関と社会の動きとの絡みは、多くの読者に新たな視点を与えるだろう。