弱さを理解し、共にケアし合う社会を目指して
2025年5月21日に発売される新刊『傷つきやすさと傷つけやすさ ケアと生きるスペースをめぐってある男性研究者が考えたこと』は、著者の村上靖彦氏が手掛ける重要な作品です。本書は、傷つきやすさとそれに伴う課題を掘り下げ、どのように私たちが相互にケアすることができるかを探求しています。著者は、もともとフランス哲学を研究しており、20年間にわたる医療や福祉の現場での経験から、支援の大切さやその難しさを実感してきました。
未知の領域への挑戦
村上氏は、看護師や支援者たちが直面する現実を通じて、いかに献身的に人々を支えるかを学んできました。彼は、自身の傷つきやすさを理解しながら、他者を傷つける可能性についても考える必要があると気付きます。本書では、ケアの行為が時に暴力的な側面を持ち得ることにも触れ、私たちがいかにしてそれを乗り越えるかを論じています。
ケアの本質に迫る
本書は、『ケアとは何か 看護・福祉で大事なこと』(中公新書)の続編的な内容であり、医療をこえたケアの本質についての洞察が盛り込まれています。具体的には、著者は家族ケアやプロのケアに潜むネガティブな出来事について分析し、どうすればケアを管理から解放し、孤立した人々に手を差し伸べることができるかを模索しています。
競争と自己反省
村上氏は、自身の過去を振り返り、競争主義や他者を傷つける言動について反省します。彼がケアの世界に入った背景には、何もできない自分に対する負い目がありました。苦境にある人々の心に寄り添うには、まず自分が持つ偏見や負の感情と向き合う必要があると考えています。
ケアの未来へ
本書における重要なテーマは、ケアを通じて構築できる社会です。共に支え合うことが、どのように生きやすい空間を創造するのか。その道筋を示すことで、著者は私たちに新たな視点を提供します。この本は、医療従事者だけでなく、誰もが共感できる内容となっています。
出版記念イベント
本書の発売を記念して、村上氏がトークイベントを開催します。第一のイベントは、2025年5月23日、丸善ジュンク堂書店で行われ、「傷つけやすさの自覚からケアの実践へ」と題し、著者自身が語るケアのあり方を聞くことができます。また、7月17日には代官山 蔦屋書店で、組織開発の専門家との対談イベントも予定されています。
まとめ
『傷つきやすさと傷つけやすさ ケアと生きるスペースをめぐってある男性研究者が考えたこと』は、物理的なケアだけでなく、精神的な側面への理解をもたらしてくれる一冊です。また、村上氏の深い洞察が、私たちのケアの在り方を見つめ直すきっかけになるでしょう。今後の社会において、どのように共に支え合い、より良い環境を創造するかは、私たち自身の手にかかっています。