第16回山田風太郎賞の受賞作品が決定
2025年10月20日、株式会社KADOKAWAが主催する第16回山田風太郎賞の受賞作が発表されました。今年は大門剛明の『神都の証人』と、遠田潤子の『ミナミの春』が栄えある賞を受賞しました。
選考会の様子
選考会は、東京會館にて行われました。選考委員会には、朝井まかて、貴志祐介、桜木紫乃、馳星周の4名が参加し、信頼の置ける審査が行われました。選考委員を代表して桜木紫乃氏は、受賞作について「圧倒的な面白さと技量が際立っていた」と語り、どちらの作品も山田風太郎賞にふさわしいと高く評価しました。
受賞作品の魅力
大門剛明『神都の証人』
この作品は、在りし日の日本における理不尽な社会的抑圧を描いたリーガル・ミステリーで、冤罪に直面する少女と、彼女を救おうと奮闘する弁護士の物語が展開されます。大門氏は、デビュー作から冤罪というテーマにこだわりを持ち続け、今回の作品もその思いを最高の形でかたちにすることができたと述べています。彼の作品は、私たち読者に生きる意味を問いかける深いメッセージを持っています。
遠田潤子『ミナミの春』
遠田氏の作品は、大阪・ミナミを舞台に描かれた人情ドラマで、悲しみや後悔を乗り越えながら、家族の絆が如何に温かく感じるものかを探る内容となっています。売れない芸人の娘や、夫に隠し子疑惑が持ち上がる妻など、様々なキャラクター達を通じて、各々の「人のあたたかさ」を感じさせる群像剧が展開されます。著者は、この地域を書いたことが勝負できると思ったと述べています。
贈賞式と祝賀会
本賞の贈呈式および祝賀会は、11月下旬に都内で行われる予定です。今年の贈呈式では、山田風太郎賞の他にも、横溝正史ミステリ&ホラー大賞や新人賞の贈呈式も併せて行われる予定です。
山田風太郎賞について
山田風太郎賞は、戦後日本を代表する大衆小説作家である山田風太郎の独創的な作品群への敬意を表明し、優れた作品を顕彰するために創設されました。毎年9月1日から翌年8月31日の間に刊行された日本の小説作品が対象となり、ミステリーやSF、時代小説などジャンルを問いません。正賞として記念品が贈られ、さらに100万円の副賞も用意されています。
結語
今回の受賞作品はそれぞれ異なる魅力を持っていますが、どちらも社会や個人の抱える問題に対して真摯に向き合った作品です。これからも作家たちのさらなる活躍を楽しみにしたいと思います。