東急電鉄と東急株式会社は、田園都市線地下区間5駅のリニューアルプロジェクト「Green UNDER GROUND」の第2弾として、桜新町駅のリニューアル工事を進めています。
このプロジェクトの目玉となるのが、北口と西口の出入口上家を木材で新設するという、全国で初めての試みです。全ての構造部材を木材で構成した地下駅から地上への出入口上家は、これまで例を見ない革新的な取り組みと言えるでしょう。
桜新町駅周辺は、八重桜とソメイヨシノの桜並木が美しく、その景観に溶け込むようなデザインが採用されました。勾配屋根の外観は、やさしく駅利用者を出迎える雰囲気を醸し出し、軽やかな印象の木造トラス構造が採用されたことで、立体的な美しさを演出しています。夜には、梁上の間接照明が美しく輝き、部材の隙間から漏れる光が、行灯のように町並みを彩ります。
木材には青森県産材も一部使用されており、2004年から続く「桜新町ねぶた祭り」をはじめとする、桜新町と青森の交流の歴史を受け継いでいます。個性的なデザインでありながらも、桜新町の人々の暮らしに寄り添い、親しみを感じられる上家を目指したという設計者の想いが伝わってきます。
今回のリニューアルでは、環境負荷の低減にも力を入れています。木材の活用によってCO2を約7トン固定化することで、排出量の抑制に貢献しています。また、地方木材の積極的な活用は、地産都消を推進し、持続可能な森林整備と林業振興にもつながります。
桜新町駅リニューアル工事は、2026年夏に竣工予定です。ホーム階には、桜並木をイメージしたアーチ状の壁面や、木材製のカウンターとベンチが設置される予定です。さらに、上りホームの空調設備の大幅な増強・新設により、駅構内の快適性も向上します。
東急電鉄は、脱炭素・循環型社会の実現に向けた取り組みとして、2022年3月に策定した「環境ビジョン2030」の実現を目指し、2050年のCO2排出量実質ゼロ・再エネ比率100%を目指しています。今回の桜新町駅のリニューアルはその取り組みの一環として、サステナブルな駅づくりを推進することで、東急線沿線に住む人々との共存を図り、自然と調和する持続可能なまちづくりを目指しています。
桜新町駅のリニューアル計画は、単なる駅設備の改修にとどまらず、地域との連携や環境への配慮を重視した、未来志向の取り組みと言えるでしょう。
全国初の木造駅舎は、環境負荷の低減という点で画期的な試みであり、地域材の活用による地方創生にも貢献しています。木材の温かみが感じられる空間は、駅利用者にとって心地よいだけでなく、桜新町の街並みに溶け込むことで、地域のアイデンティティを育む役割も担っていると感じます。
さらに、長谷川町子美術館との連携によるサザエさん一家のキャラクターを用いた仮囲いは、工事期間中の街の賑わい創出に貢献しています。地域に開かれた駅づくりを進めることで、駅が単なる移動の拠点ではなく、地域住民にとって憩いの場となるような空間へと進化していくことを期待しています。
東急電鉄が掲げる「環境ビジョン2030」は、持続可能な社会の実現に向けて、具体的な行動目標を示すものであり、その実現に向けて着実に歩んでいることを感じます。今後も、環境問題や地域社会との連携に積極的に取り組むことで、人々の暮らしを豊かにし、より良い未来を創造していくことを期待しています。