青森のリサイクルが生む新たな未来
青森県のりんご生産量が全国の約60%を占める中、毎年大量の廃棄りんごが問題視されています。それに光を当てたのが、appcycle株式会社の開発した合成皮革「RINGO-TEX®」です。この新素材が、弘前市の循環EVバスの座席シートカバーに採用されることとなりました。
りんごの廃棄から生まれた革新
appcycle株式会社は、青森県青森市に本社を置くスタートアップ企業で、2022年に設立されました。代表の藤巻圭氏は、地元のりんご産業の課題を見つめ直し、地域の廃棄物から価値を生み出すことを目指しています。「RINGO-TEX®」は、廃棄りんごの残渣を原料とし、エシカルレザーとしての機能を備えた環境配慮型の合成皮革です。
RINGO-TEX®は、原料の72%に廃棄物をアップサイクルした素材を使用しており、環境負荷を低減するために、石油由来の素材の使用を抑えています。また、動物由来の素材を使わないため、動物愛護の観点からも支持されています。
弘前市の環境への取り組み
弘前市は2024年2月に「ゼロカーボンシティ」を宣言し、環境負荷の低減に向けた施策を積極的に実施しています。その一環として、地域の循環型EVバスの運行が2025年3月からスタートし、地域の環境意識を広める役割を担っています。
appcycle株式会社は、弘前市と包括連携協定を結び、地域活性化に向けたさまざまな取り組みを進めています。今回のEVバスシートカバーへのRINGO-TEX®の採用は、その契機となる重要な一歩です。これにより、市民や観光客への環境配慮の啓発が期待されています。
具体的な取り組み内容
循環型EVバスの設置対象は弘前市内のバス1台の全座席(19席)。使用する素材は青森県産のりんご残渣を配合した合成皮革「RINGO-TEX®」であり、設置予定期間は2025年5月9日から2030年3月31日までとなっています。協力企業には弘南バス株式会社が名を連ねています。
この取り組みは、環境への配慮だけでなく、地域の経済にも寄与しています。アップサイクルによって廃棄物を有効活用し、地元のりんご農家にも利益を還元する仕組みができあがっています。
地元の声と今後の展望
弘前市役所のアプローチに対して、信田洋平様は、今回の連携により市内のSDGsへの取り組みやPR機会の創出が期待できると肯定的に述べています。
藤巻氏も、「RINGO-TEX®」の導入が持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩であると強調しました。今後、appcycle株式会社は地域の資源をさらに活用し、廃棄物の有効活用に向けた活動を推進していく予定です。
まとめ
青森県で生まれた「RINGO-TEX®」は、環境に優しい移動手段であるEVバスと結びつき、今後の持続可能な社会のモデルケースとなると考えられています。弘前市の取り組みは、地域の活性化と環境保全を両立させる一例として、全国的な注目を集めています。今後もこのようなアップサイクル技術の発展が期待されます。