高齢化社会に向けた地域社会の力とその挑戦

急速な高齢化が進む都市型自治体として、韓国のソウル・城東区と日本の目黒区は共通点を持ちながらも、独自のアプローチで高齢者の健康的な老後を支援しています。特に、フレイル（Frailty）予防という共通の課題に対して、創造的な取り組みが注目されています。このフレイルとは、加齢に伴う身体機能の低下で、病気や障害への感受性が増す状態を指し、早期に発見し適切な介入を行うことで、健康な老後を維持することが期待されています。

ソウル市城東区：ICTとデータに基づく精密なフレイル予防

科学とICTで支える、地域主導の高齢者ケア

城東区では「地域で健康に老いる」という理念のもと、独自の「城東型高齢者統合ケア」体制が展開されています。この取り組みの中心にあるのが、町単位で設置されるスマートヘルスケアセンターです。ここでは筋力トレーニングや認知トレーニング、栄養教育を通じて、身体・認知・社会的な側面を一体的にサポートしています。

測って動かす：フレイル予防の一体型モデル

特に注目すべきは、国際標準のSPPB（Short Physical Performance Battery）に基づく高齢者の身体機能評価が全自動で行われる点です。評価にはAndanteFitという機器を使用し、歩行速度や椅子からの立ち上がり、バランステストなどが自動的に測定されます。その結果は、個別の運動指導プランの作成や介入効果の可視化に活用されています。また、国家資格を持つ運動指導士がスマート運動機器を使ったプログラムを実施し、筋力強化を図っています。

評価から支援へ：つながる地域ケアのプロセス

プログラム終了時には再評価が行われ、自主トレーニングへの移行や継続的な参加の可否を判断します。地域の福祉サービスとも連携し、科学的な評価と支援の一体化が図られています。

東京の目黒区：住民と地域が築く生活密着型の予防モデル

寄り添う支援：フレイルサポーターがつなぐ地域の力

目黒区では「地域包括ケアシステム」に基づく住民主導のフレイル予防に力を入れています。東京大学と協力して育成された「フレイルサポーター」が中核を担い、地域の高齢者を対象にフレイルチェック会を定期的に開催しています。

評価から地域へ：目黒式“つながる”予防モデル

目黒区では高齢者の身体の評価は、全自動機器を使用せず簡易的な方法で行われています。結果に基づいて生活改善のアドバイスや地域活動への参加を促し、住民同士のつながりを深めています。

予防を伝える言葉：「フレイル」が選ばれた理由

フレイルは「老衰」や「虚弱」といった言葉よりも適切な表現とされ、早期の対策がカタカナで広がる理由となっています。韓国でも回復可能な状態としてのフレイルが注目されています。

暮らしの中で続ける：目黒区の多彩な予防活動

目黒区では「目黒タオル体操」やオンライン運動プログラム、口腔・栄養支援活動など、日常生活に密着した様々な予防活動が行われています。また、孤立死防止のための安全機器の配布も行われ、地域に根ざした健康づくりが進められています。

テクノロジーと地域社会の融合：未来へつなぐハイブリッドモデル

科学と地域の“いいとこ取り”：ハイブリッド型モデルの可能性

城東区と目黒区の取り組みは、超高齢社会に直面する国々の人口構造を象徴するものです。城東区は科学的な評価を通じ、目黒区は住民主体の活動を通じてフレイル予防の持続可能なモデルを構築しています。これらのアプローチは相互補完的でもあり、今後、スマート技術と地域のつながりを融合させた「ハイブリッド型フレイル予防モデル」として定着する可能性が期待されています。