新たな水田JCMコンソーシアムの発足とその目的
2023年10月、出光興産株式会社が中心となり、大阪ガス、兼松、Green Carbon、損害保険ジャパン、東邦ガス、芙蓉総合リース、三菱UFJ信託銀行らと共に「水田JCMコンソーシアム」を設立しました。このコンソーシアムは、二国間クレジット制度(JCM)を利用し、フィリピンにおいて水田からのクレジット普及を図ることを目的としています。
JCMとは何か?
JCM(Joint Crediting Mechanism)とは、日本と協定を結んだ国々が協力して温室効果ガスを削減し、その成果を両国で共有する制度です。特に、フィリピンでは農業部門においてJCMクレジットの発行が進んでおり、間断灌漑技術がこの制度の一環として正式に承認されています。これにより、フィリピンでの農業分野における温室効果ガス削減が期待されています。
間断灌漑技術の意義と効果
間断灌漑技術とは、水稲栽培において水田の水を一定期間抜き、その後再度水を張る方法です。この手法によって、常時水を張っている状態と比べて、メタンの排出が減少します。研究によれば、適切に実施すればメタンの排出が約30%削減され、同時に米の収量が向上することが報告されています。しかし、この技術は天候に敏感であり、その影響を分析することには未だ課題が残ります。
コンソーシアムの具体的な取り組み
本コンソーシアムでは、各社がフィリピンにおいて推進しているプロジェクトを通じて得られるデータを集積し、間断灌漑の導入効果やリスクを分析することが重要な役割と位置付けています。この情報は、パートナー国の農家や政府関係者に向けて発信され、JCMへの興味を高めることを目指します。また、雨量や台風といった気象要因との相関を明らかにすることで、不透明な天候リスクを可視化し、プロジェクトに対する理解を深めます。これにより、投資を促進し、クレジット需要家が安心して取引できる状況を整えます。
企業の参画と今後の展望
コンソーシアムは、設立時の8社だけでなく、今後賛同する企業も受け入れ拡大していく方針です。また、環境省や農林水産省もオブザーバーとして関与し、国としてのサポートを受けることが期待されます。出光興産はフィリピンのイザベラ州で間断灌漑を使用したJCMクレジットの創出事業にも取り組んでおり、他のプロジェクトとの知見を共有しながらカーボンクレジット事業を進めていく考えです。これにより、さらなる温室効果ガス削減を図ることを目指しています。
環境省・農林水産省の期待
環境省および農林水産省からもこの取り組みに対して期待が寄せられています。間断灌漑技術は温室効果ガス削減に対する有望な手法であり、民間企業が中心となって進めるこのプロジェクトは、企業間のオープンな連携で共通の課題を解決する新たなモデルとして注目されています。特に、政府による支援なしに自立して案件が形成される「民間JCM」が進展することで、より多くの企業が参加し、持続可能な開発目指すことできるというビジョンが描かれています。
この新たな試みが、温室効果ガスの削減に貢献するだけでなく、地域経済の活性化にも寄与することが期待されます。