未来を考える一冊:『風の谷という希望』
2025年7月30日、英治出版から安宅和人氏の新著『風の谷という希望──残すに値する未来をつくる』が刊行される。この作品は、250以上のテーマを7年以上にわたって深く掘り下げ、持続可能な社会の構築に向けた新たな視点を提供する。
この本の背景には、都市集中化が進む現代に対する疑問がある。数十年後、主要国のほとんどの人々がごく狭い都市空間に生活し、その結果、自然や歴史的な地域に人々が居住できなくなる未来が待ち受けているのか、という問いがある。「私たちはそのような未来を次世代に残したいのだろうか?」という思索からスタートしたのが「風の谷をつくる」プロジェクトだ。
ここで提唱される「風の谷」とは、持続可能かつ人が住むことのできる地域を指す。このプロジェクトは、自然と都市の調和を実現し、テクノロジーを活用した新しい形態の暮らしを模索するものである。著者は、地域の専門家や学生など多様な参加者が集い、知恵を結集していく必要があると主張する。
風の谷の具体例
本書では、森や流域、エネルギー、教育、医療、農業など、幅広い分野における問題とその解決策が示されている。たとえば、健康なライフスタイルを維持するためには、精神的、肉体的、社会的な健康を支える医療のインフラを整える必要がある。それと同時に、新たな食文化を醸成するための農業モデルも重要な課題とされる。
また、地域経済にも焦点が当てられ、持続的な経済活動を実現するためには、地域資源をどのように活用していくかが問われている。
本書の構成
本書は984ページ、約66万字にわたり、数百の図版も用いて深く掘り下げる。内容は、風の谷の概念や人類の課題、具体的な領域まで多岐にわたる。具体的なインフラの設計についても触れられており、実用的な視点からの提案がなされている。
この全貌は、決して単なる理論や制度設計ではなく、実際の生活や地域に密着した取り組みとして、具体化されている。
誰に向けた本なのか
地域で新たな挑戦をしたいと考えている方々や社会の変革に興味を持つ専門家、さらには自らの違和感を感じつつも前に進めないような多くの人々にとって、この本は一つの指針となるだろう。新たな冒険と希望に満ちた未来を想像するための第一歩として、多くの人々の手に取られることを期待したい。
著者について
著者の安宅和人氏は、慶應義塾大学で環境情報学部の教授として教育に携わっている傍ら、LINEヤフー株式会社のシニアストラテジストでもある。マッキンゼーでの経験を経て、さまざまな分野での事業開発やブランド再生に関与してきた。
次世代のために、より良い未来を作るための知恵を結集した本書。私たち一家に手に取ってほしい一冊だ。