静岡県三島に誕生した新たなアートプロジェクト
静岡県三島市に位置するウイスキー蒸留所の壁に描かれた鮮やかな壁画。これらの作品は、東京都のアート企業OVER ALLsと、同じく東京に本社を置くWhiskey&Co.とのコラボレーションによって制作されました。今回は、アートとウイスキーが交わる、特異な形式のプロジェクトについてご紹介します。
プロジェクトの背景と物々交換の意義
この壁画制作はOVER ALLsによるもので、Whiskey&Co.が所有する倉庫で行われました。気になるのは、なぜ物々交換の形をとったのでしょうか。実は、OVER ALLsはアート制作に対する対価として、Whiskey&Co.からカスク・ウイスキーのオーナー権を受け取ることにしました。これは、「資本を介さずに価値が直接やりとりできる」という新しい試みを試すものです。
プロジェクトの根底には、両社に築かれた信頼関係があります。この信頼があったからこそ、アートとビジネスの新しい形を実現することができたのです。従来「お金が必要である」という思考が定着する中で、新たな価値交換の可能性を探る姿勢が特に際立っています。
アート作品の特徴とテーマ
OVER ALLsは「Beautiful Noise」というテーマのもと、様々な作品を手がけてきました。今回の壁画も、そうしたアプローチが反映されています。例えば、静岡県三島市の倉庫に施された壁画は、ウイスキーが樽の中で熟成される際に発生する「天使の分け前」という文化を題材にしています。この表現は、蒸発する水分やアルコール分の量を示し、ウイスキー製造の神秘的な一面を引き出しています。
また、Whiskey&Co.のジン「Teen Spirits」の壁画も新たに描き直され、商品のパッケージデザインがアートとして生まれ変わりました。もともとOVER ALLsのオフィスの壁に描かれていたものを、今度は倉庫の外壁に描くことで、より多くの人々にその魅力を生き生きと伝えることができるようになりました。
OVER ALLsのリーダーシップ
株式会社OVER ALLsは、代表取締役社長の赤澤岳人が率いるアート制作会社です。赤澤氏は、大手人材会社でのキャリアを経て、2016年にOVER ALLsを設立しました。彼は、アートがもたらす社会的な影響や可能性を信じ、それを具現化する作品を国内外で広めてきました。
ウイスキーとアートの共鳴
一方、Whiskey&Co.は2021年に創業し、特にバーボンスタイルのクラフトウイスキーに特化しています。この会社のブランドテーマは「Playful!!!」であり、アートとの親和性が高い企業です。また、企業の成長を地域の活性化につなげることを目指し、各地のディスティラリーと連携を図っています。
未来への展望
このプロジェクトは、ただのウイスキー蒸留所の壁画制作ではなく、アートと業界の新しい可能性を切り拓く試みです。物々交換という形をとることで、価値の多様性や自由な交換ができるというメッセージが、今後のアートシーンの変革にも寄与することでしょう。オリジナルの視覚的な体験と共に、このプロジェクトは地域社会にも新しい風を吹き込むことが期待されます。アートの力が、ウイスキーの魅力を引き立て、さらなる社会との対話を生むことを目指しています。
東京都港区南青山に本社を構えるOVER ALLsと、そのアートを受け入れた静岡県三島市のWhiskey&Co.。両者の出演が一つの物語を紡ぎ出すことで、新たな文化や価値が生まれるのです。