古野電気がデータマネジメント賞2025で先端技術活用賞を受賞
古野電気株式会社(兵庫県西宮市)は、一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)が主催するデータマネジメント賞2025において「先端技術活用賞」を受賞しました。この賞は、データマネジメント分野で他社の模範となる優れた活動を行っている企業や機関に送られるもので、今年で12回目を迎えます。
受賞理由と背景
古野電気は船舶向けの電子機器を製造するメーカーであり、特に迅速な対応が求められる船舶の緊急修理スチュエーションにおいて、中間層の社員が不足しているという課題に直面していました。社内には、長年の経験を積んだベテラン社員と、若手社員の二つの世代しか存在せず、「相談できる先輩」がいないという状況が続いていました。
このような背景から、テクニカルセンターへの問い合わせが増え、対応が逼迫し、業務が効率的に進まない状況でした。そこで古野電気は、RAG(Retrieval-Augmented Generation)という技術を導入し、社内の技術文書、サービス履歴、FAQを一元管理するシステムを構築しました。この取り組みによって、若手エンジニアは独自に情報を検索・判断できる環境が整い、テクニカルセンターの負担が軽減されました。
RAGの導入効果
RAGを活用することで、現場からは「問い合わせの負担が減った」「業務への不安が和らいだ」との声が寄せられています。導入に際しては、推進担当者が現場を回り、社員のニーズに即した形で技術を適用することで、効果的な浸透を図りました。この取り組みは、決してトップダウン方式ではなく、現場の実情に寄り添ったものです。
特に「暗黙知の形式知化」という理論に基づき、RAGを単なる業務効率化のツールにとどまらず、組織全体で知識を共有するための手段として位置づけることに成功しています。現場のスタッフはこの技術を「何でも教えてくれる先輩」と評しており、テクニカルサポートと従業員との協力によって、知識継承が効果的に行われているのです。
今後の展望
今回の受賞は、同様の人材構成の問題を抱える他の企業にとってもモデルケースとなるでしょう。古野電気は、今後もデータの活用を通じて経営の改革や効率化に取り組み、「安全安心・快適」、そして「人と環境に優しい社会・航海の実現」に向けて前進していく所存です。
古野電気は、1948年に世界初の魚群探知機を実用化して以来、舶用電子機器分野において、独自の技術力を活かして数々の革新を続けてきました。現在では、世界90カ国以上に販売網を確立し、舶用電子機器の総合メーカーとしての地位を築いています。今後もその技術と取り組みが、業界へ与える影響に期待が高まります。