地域活性化に向けた「推し」地域の魅力と未来への展望

国際観光白書によると、2024年に訪日外国人は過去最高の3,687万人に達し、国内の旅行消費額も25兆円を超えるなど、観光業は回復を見せています。その一方で、国内旅行の人数はコロナ前と比べ8.2%減少しており、旅行スタイルの変化が求められている状況です。日本人の旅行消費をさらに活発化させるための施策の一つとして「推し」地域の活用が注目されています。

「推し」地域とは？

「推し」地域とは、自分が特に愛着を持ち、繰り返し訪れる場所のことを指します。JTBコミュニケーションデザインの調査によれば、全国の20歳から69歳の男女の30.5%が「推し」地域を有していることが明らかになりました。調査に参加した1040人の回答を分析した結果、「推し」地域にどのように関わり、どのような魅力を感じているのかが具体的に示されました。

調査結果の概要

調査によると、「推し」地域のきっかけは「旅行や飲食店」との関係が主であり、65.3%が「旅行・趣味・飲食店がきっかけ」と回答しています。また、居住地と同じ地方区分が「推し」地域である割合は全体で43.2%と、地元愛が強いことが確認されました。

訪問頻度の分析

「推し」地域への訪問頻度は「2～3ヶ月に1回以上」が38.5%で、中でも地元の人は高頻度で訪れていることが分かりました。特に、訪問時の予算は10,000円から50,000円の間が45%を占めており、地域の経済にも寄与しています。さらに、「推し」地域がある人の多くは11年以上の歴史を持ち、その愛着は長期的なものとなっています。

訪問のスタイルと理由

訪問スタイルでは、「1人で行く」が37.8%、誰かと一緒に行く人が62.2%と、複数人数での訪問が一般的です。人々が「推し」地域に行きたくなる理由は「日常から離れたい」や「リフレッシュしたい」という意見が大半を占めています。

地域の可能性と施策

この調査結果を踏まえ、地域活性化に向けた施策として以下の点が指摘されました。
1. 気軽に何度も訪れることを促進：日常的に訪れることができる仕組みやプログラムを用意し、訪問の頻度を高める工夫が必要です。
2. 訪問時の非日常体験を提供：自然や癒し、リラクゼーションをテーマにした施設やイベントを活用し、愛着を深めることに繋げます。
3. 地域間連携の強化：他の地域や施設と連携し、相乗効果を生むことが重要です。共通のテーマでのイベントを企画することで、広範な訪問者を対象とした施策を展開できます。
4. インフルエンサー支援の強化：地域を推す方々がSNSで発信しやすい環境を整え、魅力や話題性を高めることが考えられます。10人中7人が自らの「推し」地域を話題にしていることからも、その潜在的な力を活かすための支援が期待されます。
5. 地域愛の強化：「推し」地域に対する愛着が高まるような活動を通じて、居住や貢献に繋がる関係人口の創出を目指します。「自分の居場所を持ちたい」「貢献したい」と思う人々に対して、地域活動の機会や場を提供することは効果的です。