トロムソ、グローバルサウス国への進出が期待される実証事業
株式会社トロムソ(広島県)が、経済産業省の「令和5年度グローバルサウス未来志向型共創等事業」に採択された。このプロジェクトは、「ベトナム国/バイオ炭活用による農業の生産性向上と低炭素化の実証事業」であり、同社は農林残渣を利用してバイオ炭を製造し、その効果を検証することを目指している。
プロジェクトの概要
この実証事業は、様々な農林残渣(樹皮やカカオ殻、もみ殻、稲わらなど)を使用してバイオ炭を製造し、ベトナム南部で行う。自身開発の炭化装置を複数の拠点に導入し、農作物の収量の安定化や化学肥料の削減、そしてCO₂の削減効果の検証が行われる予定だ。
バイオマスの循環利用
トロムソのプロジェクトは、廃棄物の削減と環境保護を両立するものとして注目されている。廃棄される農林残渣を再資源化し、持続可能な循環型の農業モデルを構築することを目指している。このバイオ炭は、土壌改良効果を持つことに加え、炭素を土壌に固定することでCO₂排出の削減にも寄与する。
クレジット化の取り組み
トロムソは、農地施用による炭素貯留効果をカーボンクレジットとして認証する取り組みも進めており、実際のビジネスモデルへと転換する狙いがある。これにより、環境貢献と経済的な利益、双方を実現することに挑戦している。
国際的な展開
このプロジェクトは、ベトナムにおける「100万ha稲作地プロジェクト」と連携しており、現地の農業環境研究所と提携を結ぶなど、国際的な規模での取り組みが進行中だ。さらに、アジア地域のみならず、南米へも展開可能性を考えており、豊富なバイオマス資源がある国々(インドネシア、マダガスカル、ガーナ、ブラジルなど)へ参入を考えている。
このような国際的な視野は、日本の技術の輸出と雇用創出にもつながる。本プロジェクトでは、炭化装置の製造・導入によって、国内外で55名の雇用を見込んでいる。
今後の展開
トロムソは、2025年7月の事業開始を目指し、現地調査を行い、その後装置の製造を進める。2028年3月に実証事業が終了した後は、商用展開を開始し、2033年には年間70台の装置をグローバルサウス諸国に展開、年間売上77億円を目指す計画だ。
製品情報:連続式バイオ炭製造装置 TCE-C002
トロムソが開発したこの装置は、地域資源を有効利用し、様々な農林残渣を高品質なバイオ炭に転換できるものだ。主な特徴は以下の通りである。
- - 対象バイオマス:樹皮、カカオ殻、もみ殻、稲わら、ピーナッツ殻など
- - 炭化方式:スクリュー式連続炭化
- - 品質制御:炭化温度・時間を調整し、最適なバイオ炭を生成
- - 炭化能力:約0.6㎥/h + 0.2㎥/h
- - 寸法/重量:4500×1400×2500mm(煙突含まず)、約1200kg
- - 電源:AC200V 3φ 50Hz/60Hz
この装置は、農業・林業において残渣をエネルギー資源に転換し、脱炭素社会と地域経済の活性化に大きく寄与するだろう。
株式会社トロムソは、持続可能な農業の実現に向けて、さらなる検証と発展を続けていく予定だ。