グローバルヘルスを通じた日本の外交戦略の強化について
2023年11月18日、茂木敏充外務大臣が、多様な分野から集まった企業の有志団体「グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同」との面会を行いました。その際、有志は「健康医療安全保障を通じて日本外交を推進するための要望書」を手渡し、この分野での具体的な取り組みを提案しました。以下にその要点をまとめます。
要望事項
この要望書には、以下の4つの重要なアクションが含まれています。
1. グローバルヘルスにおける支出の拡大
日本のODA(政府開発援助)を通じ、グローバルヘルスへの支出を戦略的に増やすことで、健康医療安全保障の強化を図るというものです。具体的には、官民連携や課題解決型のインパクト投資を推進し、民間資金を動員する必要があります。
2. 国際機関への戦略的な拠出
グローバルファンドなどの国際機関への拠出に関して、日本企業の意見を考慮しながら戦略的に対応することが求められています。今年の11月にはグローバルファンドの増資会合が予定されており、日本が理事会の議席を維持すべく積極的な支援が必要です。
3. 日本企業による国際展開の支援
国際機関を通じた日本企業の製品やサービスの展開が、グローバルサウスの課題解決に寄与する一方で、日本経済の発展にも繋がります。このため、政府は調達支援の仕組みを強化すべきです。
4. 研究開発の推進
日本の優れた研究基盤や製薬技術を活かし、競争力を高めることが求められています。特に、パンデミックの際に必要とされるワクチンや医薬品の国内開発・生産を支えるために、人材育成や研究開発への支援を強化する必要があります。
有志団体の見解
有志団体の代表である渋澤健氏は、グローバルヘルスは社会的責任の一環であり、経済安全保障や「強い日本」の実現に寄与すると強調しています。この重要性を認識し、企業としても日本の成長戦略に貢献する姿勢を示しました。
各企業の取り組み
各企業も独自の貢献を行っています。たとえば、エーザイはWHOを通じて治療薬を32カ国に無償提供し、治療効果を上げていることを報告。豊田通商はアフリカ地域でワクチン保冷輸送車を展開し医療アクセスの改善に繋げています。また、NECはデジタル技術を駆使し、感染症ワクチン開発や母子保健分野での活動を進めています。
そのほか、シスメックスは血液検査機器の普及を進め、富士フイルムは新興国での結核検診に取り組んでいます。SORA Technologyはドローン技術を活用し、蚊媒介感染症対策で国際的な標準を獲得しました。
グローバルヘルス分野での取り組みは、単に医療の質を向上させるだけでなく、日本の国際的な地位の強化にも寄与することが期待されています。日本が「世界の真ん中で咲き誇る」外交を行うためには、こうした企業の連携や、外務省の支援が不可欠です。今後もこの動きに注目が集まるでしょう。