流域治水の新提言: 住民参加による持続可能な水管理の実現へ

流域治水の提言が示す未来

公益社団法人である土木学会が2024年7月26日に発表した最新の提言は、「流域全体における水収支の把握」と「領域を越えた協力」による流域治水の重要性を強調しています。この提言は、過去数年にわたり続けられた流域治水に関する研究や活動をもとに、今後の治水施策の方向性を示すものです。

提言の背景と目的

土木学会は、2020年に続く豪雨災害の増加を受け、流域治水に関する提言を行ってきました。今回の提言は、豪雨災害対策総合検討委員会のもとで二年間の議論を経て取りまとめられたもので、より具体的な政策提案を行うことを目的としています。

この新たな提言には次のような重要なポイントが含まれています。

1. 水収支の見える化

流域全体の水収支を把握し、住民がリスクと治水の効果を理解できるようにすることが重要です。これは、本川や支川、用排水路、下水道、地下水、氾濫水の相互作用を考慮した一体解析によって実現されます。提言では、流域水収支図を通じて、降雨量や河道の流下量、氾濫量の変化を時系列で捉えることが提案されています。この図を作成すれば、地域の住民は災害リスクを理解しやすくなり、自らの行動を見直すきっかけとなるでしょう。

また、多段階リスク明示型浸水想定図とリンクさせることで、各整備段階における降雨による浸水リスクを明示することができます。これにより、住民はどのような条件下で浸水が発生するかを詳しく知ることができ、より適切な対策を考える手助けとなります。

2. 連携による包括的な治水策

流域治水には、治水だけではなく利水や自然環境、地域文化、経済活動を考慮した目標の策定が必要です。そのためには、国、都道府県、市区町村、民間企業、地域住民が一体となり協力することが不可欠です。全住民が流域の自然特性や歴史的経緯を理解することで、地域の持続可能な発展を目指すことができます。

具体的な連携としては、大学の研究者や国の研究機関が河川管理者と協力してケーススタディを行ったり、水害保険の設計に提言で挙げられた図を活用することが考えられます。また、自治体の観測体制を強化するための支援策や、地域に寄り添った土地利用計画の策定も重要です。