黒川博行の新たなクライム・サスペンス『流砂』
著:黒川博行が手掛ける最新作『流砂』が2026年8月26日(水)に発売される。この作品では、特殊流動型犯罪グループとして知られる「トクリュウ」の実態に迫り、現代社会に蔓延する犯罪の本質を描写している。著者は、すでに『後妻業』で事件の予言を行い、『勁草』ではオレオレ詐欺の背後を掘り下げたことで知られる。今回の『流砂』もまた、時代の闇を映し出す作品となることだろう。
現代の犯罪事情とトクリュウの実態
特殊詐欺の被害額は2026年の上半期だけで1,816億円に達し、過去最悪の数字を記録している。この背後には、匿名で活動する流動型犯罪グループ「トクリュウ」が存在する。彼らは特殊詐欺や闇バイト、強盗事件など、様々な犯罪を繰り広げているが、その内部構造はほとんど明らかにされていない。クライム・サスペンスの巨匠・黒川は、取材を重ねる中で、犯罪の実行犯たちが持つ短絡的な思考や人に対する無関心さに驚愕したという。
トクリュウの犯罪行為の実態
『流砂』では、トクリュウがどのように人材を募集し、その後どう使い捨てているのかが描かれる。登場人物には、宗教二世として育った受け子や、冷酷な指示役、守り役のヤクザたちがいる。彼らは躊躇なく弱者を踏みにじる性格を持っており、過去の様々な犯罪組織の実態と重なる部分も多い。著者はその背後に潜む人間関係や倫理観を鋭く描写し、捜査側と犯罪者側の視点からストーリーを進める。
大阪を舞台とした物語
本作の舞台は大阪。刑事である皆木と迫田が行方不明者届を受理したことから、物語は動き出す。彼らは連続失踪事件の真相を追い、執念の捜査に挑む。様々な困難が待ち受ける中、彼らを取り巻く環境や、犯罪者たちの思惑が交錯する。ストーリーは一粒の砂のような痕跡を頼りに進み、壮絶な逃走劇へとつながっていく。
人間小説としての深み
従来の警察小説や犯罪小説の枠を超えた『流砂』は、圧巻の人間小説として新たな地平を見せてくれる。犯罪者の視点から描かれたストーリーは、読者に対して「次のターゲットはあなたかもしれない」という警告を発する。そんな現代社会の闇を、黒川は最新の技術や知見を駆使して浮き彫りにしている。
著者について
著者の黒川博行は、1949年に愛媛県に生まれ、京都市立芸術大学を卒業後、大阪で美術の教員として勤務していた。彼は数々の受賞歴があり、特に『破門』で直木賞を受賞したことでその名を広めた。ミステリー文学への貢献も認められ、2020年には日本ミステリー文学大賞も受賞している。著者の作品は、常に人間の成り立ちや心理を掘り下げており、『流砂』でもそれが色濃く表現されている。
今年の8月26日、新潮社からの発売を控える『流砂』は、これまでの作品に劣らず、深い洞察を与えつつエンターテイメント性も兼ね備えた重要な一冊である。関心を持つ読者はぜひ手に取ってみてほしい。