建築施工職人調査結果:賃上げ実感ゼロで不安が広がる業界の現実
近年、賃上げの動きが広がっているものの、多くの建築施工職人にとって現実は厳しいものでした。建築市場株式会社が行った調査によれば、約78.6%の職人が賃上げの恩恵を実感していないという結果が出ています。本記事では、調査結果をもとに建築施工職人の現状、賃金の問題、業界の未来について考察します。
1. 調査概要
この調査は、一都三県において建築施工に従事している職人103名を対象に行われました。調査期間は2025年11月19日から同年11月20日まで。インターネット調査によって得られたデータをもとに、賃金や仕事に対する評価、不安感を数値化しました。
2. 賃上げの実感
調査によると、46%の職人が「全く実感していない」と回答し、33%が「あまり実感していない」と答えています。これにより、8割以上が賃上げの影響を感じていないことが浮き彫りになりました。一方で、11.7%は「やや実感している」、9.7%は「非常に実感している」と回答しており、賃上げが一部の職人には影響を及ぼしていることも伺えます。
3. 価格競争に巻き込まれる
さらに、57.3%の職人が「価格競争に巻き込まれている」と感じており、その理由として「中間マージンが多すぎる」「相見積もりで適正価格が出ない」といった声が寄せられています。建築業界では、多重下請け構造が影響し、職人の技術が適正に評価されない現状が続いています。
4. 将来への不安
特に注目すべきは、76.7%の職人が将来に不安を感じているという結果です。それに加え、新規の取引先開拓に関して74.7%が十分に活動できていないことも分かりました。これらの結果から、業界全体が深刻な問題を抱えていることが明らかになりました。
5. 子どもへの職業の勧め
さらに、84.5%の職人が自分の子どもや若者にこの職業を勧めたくないという調査結果は、業界の魅力の低下を示しています。これは、今後の技術継承にも悪影響を及ぼす要因となり得ます。
6. 施主との直接取引の期待
調査では、施主と直接つながることができる取引環境に対して、職人の約78.6%が働き方が改善され、仕事への誇りが高まると回答しています。これは、業界の構造を見直し、職人が適正価格で評価されるための新しい仕組みが求められることを意味しています。
7. まとめ
建築業界の職人は賃上げの恩恵を感じられず、価格競争に苦しむ現実が浮き彫りになりました。これからの業界のためにも、中間構造の見直しや職人と施主を直接つなぐ仕組みが必要不可欠です。今後、職人が誇りを持って仕事ができる環境を整えていくことが、業界の発展に繋がることでしょう。私たちもその動きに注目していきたいと思います。