新たな希望、経皮的三尖弁接合不全修復システム「TriClip™」
2025年7月17日、アボットメディカルジャパンが日本初の経皮的三尖弁接合不全修復システム「TriClip™システム」の製造販売承認を得た。これは、重度の三尖弁逆流症(TR)を患い、高齢や併存疾患等により外科的手術が困難な患者に対して、新しい低侵襲治療の選択肢を提供することを目的としています。
三尖弁逆流症とは
三尖弁は心臓の右心房と右心室の間に位置し、血流の一方向性を保つ役割を担います。三尖弁が正しく閉じないと、血液が逆流し、腹水や浮腫、食欲不振などの症状が現れます。日本では約22万人がTRに苦しんでおり、高齢化に伴いその数は増加しています。
TriClipの治療メカニズム
TriClipは大腿静脈からカテーテルを挿入し、先端のクリップを使用して三尖弁を固定することで逆流を軽減します。この方法は、アボットの過去の技術である「MitraClip」を基にしています。これまでに欧州で15,000件以上の施術実績があり、2026年には日本でも提供予定です。
国内臨床試験の成果
ASJ-504試験では、対象患者37名全員が術後12カ月で全死亡または外科手術を回避できる結果を得ました。また、心不全による入院率も1患者あたり0.03件という結果が出ています。これにより、TriClipは患者のQOLを向上させる可能性が確認されています。
ステークホルダーの声
富山大学の絹川弘一郎教授は「重度のTR患者には、これまで適切な治療が不足していた」と述べ、TriClipが患者の予後を改善できる可能性を強調しています。また、アボットのストラクチュラルハート部門長であるジュールス・コーステン氏も「新しい治療選択肢の提供に期待を寄せている」と述べました。
アボットは今後も革新的な治療法の提供を目指し、人々の健康を支える活動を続けていくことを宣言しています。TriClipは、特に高齢者や併存疾患を有する方々にとって、外科治療よりもはるかに低侵襲で希望の光となるでしょう。