高行健の『逃亡』再演を目指す演劇ユニットの挑戦と魅力

2024年8月15日、東京・三鷹のSCOOLにて、演劇ユニット「三人之会」による特別企画『「逃亡」再演のための試作上演』が行われます。このイベントでは、中国演劇と能楽をテーマにした舞台が刷新される姿を見ることができるとあって、演劇ファンの間で注目を集めています。

この企画の背景には、昨年10月に行われた高行健の『逃亡』の公演があります。中国の社会政治に根ざしたこの戯曲は、時代の混乱の中での人間の尊厳を問う内容で、多くの観客に深い感動を与えました。特に、「水の中で溶け落ちる文字」という美術や、封鎖された劇場入り口という大胆な演出が話題となり、参加者は作品の中に深く引き込まれたのです。

今回の試作上演では、演出家の奥田知叡が手がける30分の作品が披露されます。ステージでは中国演劇の要素と、伝統的な能の技法が組み合わされ、現代の視覚的表現が展開される予定です。出演者たちは、演劇集団円の新上貴美さん、銕仙会からの清水寛二氏、ハンドパン奏者の三谷亮太郎氏という魅力的な顔ぶれです。

作品の魅力と演出の思い

「逃亡」は、デモによる弾圧を背景にした一組の男女の逃避行を描いています。彼らが誰もいない倉庫に逃げ込み、そこで出会った中年の作家との対話を通じて、社会の未来や愛について語る深い作品です。高行健自身が中国の小劇場演劇を開拓した革新的な作家であることを反映し、彼の作品には強いメッセージ性があります。

演出の奥田知叡は、コロナ禍の中で『逃亡』の戯曲を初めて読み、作品のテーマに深く共鳴しました。彼は「命の危機や社会の混乱の中で、人はどのように生きるべきか」を問いかけ、演劇の力で視聴者に新たな考えを促したいと語ります。現代の演劇において、その命題を描くことは容易ではありませんが、奥田は彼のキャストやスタッフと共にその挑戦に立ち向かっています。

アートとしての表現

美術担当の今子青佳は、アナログな手法での制作にこだわり、現代アートとして「書」の表現を模索しています。彼女は、従来の定義に捉われず、表現の幅を広げるための挑戦を続けています。映像作家の田詩陽は、リアルタイムの映像を劇上に盛り込むことで、観客に異なる視覚体験を提供することを目指しています。彼の作品は、感情や状況をより深く理解する手助けをすることでしょう。

終演後の交流

試作上演終了後も、観客は出演者や制作陣との対話の機会が設けられます。このセッションでは、参加者が作品についての感想や想いを直接語り合うことができ、より深い理解を促す素晴らしい場ともなります。

この特別企画は、2024年8月15日の午後に全3回、入場料は無料ながら予約が必要です。興味のある方は、ぜひお早めに参加の応募をしてください。この貴重な機会に、演劇の新しい形を体験し、深いメッセージを持つ作品を楽しんでみてはいかがでしょうか。未来の演劇の可能性を探るこの企画に、是非足を運んでください。