延岡学園の取り組み
宮崎県延岡市に位置する延岡学園は、2026年4月に新設する「情報テックリート科」を通じて保護者の経済的負担を実質ゼロにする取り組みを発表しました。この新たな学科は、急速に深刻化するサイバーセキュリティの人材不足に応えるものです。
背景
近年、大手企業を狙ったサイバー攻撃が相次ぐ中、セキュリティ人材の不足は事態を一層深刻にしています。日本国内では約11万人のセキュリティ人材が不足しており、経済産業省の予測では2030年には最大で約79万人のIT人材が不足するとされています。即戦力的人材の育成が急務ですが、高スキルを持つ専門家の育成には長い時間がかかります。
情報テックリート科の設立
このような社会情勢を背景に、延岡学園は「情報テックリート科」を設立することを決定しました。この学科では、希望ある若者が経済的理由に左右されることなく、安心して学べる環境が整えられます。保護者負担実質ゼロを実現するため、国からの就学支援金や奨学給付金、さらにエンダウメント投資的な取り組みを組み合わせることで、学費の全額をカバーします。
エンダウメント投資とは
エンダウメント投資は、教育機関が寄付金を基に運用益を長期的に活用し、教育の質を高める手法です。延岡学園では、北浜キャピタルパートナーズの前田健晴氏がこの取り組みを指導し、寄付を通じて教育に資金を投入します。
学びの環境
情報テックリート科では、プログラミングやデータ分析、サイバーセキュリティの基礎を学ぶ機会が与えられます。特に、ホワイトハッカーとしての技能育成に注力し、サイバーセキュリティの専門家を育てる道が開かれています。さらに、学校と提携する企業は、実践的な教育やインターンシップの機会を提供します。これにより、生徒は早期から仕事に必要なスキルを習得することが可能となります。
保護者負担実質ゼロの意義
この取り組みには、家計の負担を軽減することに加えて、生徒が家庭の経済状況を気にせずに専念できる環境を提供する意味があります。こうした無用な心配を排除することで、生徒は「自分はなぜ学ぶべきか」という本質に向かいあうことができるのです。
今後の展望
延岡学園は2026年4月の開設に向け、カリキュラムを整備し、SOC(セキュリティ運用監視センター)の設立を目指しています。この計画により、卒業生はセキュリティ業界で即戦力として活躍できるキャリアを築くことが期待されています。情報テックリート科が卒業生を送り出すことによって、延岡から新たなサイバーセキュリティの波を生み出すことを目指しています。
延岡学園の理事長である佐藤嘉剛氏は、教育が地域と日本の未来を変える力を持っていると語っています。社会的な課題に対するこの決断は、今後の日本のIT・サイバーセキュリティ分野に貢献することでしょう。若者たちの将来を拓くこの取り組みは、地域だけでなく国全体にも良い影響を及ぼすことを期待されています。