セレンディクスが革新を推進する
近年、建設業界は環境問題への配慮が求められ、効率的かつ持続可能な技術の導入が加速しています。その中で、3Dプリンター技術が注目を集めています。この新しい技術を用いることで、従来の建設方法に革新をもたらす試みが進んでいます。セレンディクス株式会社(以下、セレンディクス)は、タイの大手素材企業サイアム・セメント・グループ(SCG)との業務提携を発表し、さらなる技術革新を目指しています。
業務提携の背景
西宮市に本社を置くセレンディクスは、3Dプリンターによって建設を自動化し、高品質かつ低コストの住宅を提供することを目指しています。同社は、SCGのセメント事業部門であるSCG Cement Co., Ltd.と共同で3Dプリンター用材料の開発を進めることを決定しました。この提携により、両社は環境負荷の低減を目指し、脱炭素社会を実現するための新たな材料開発に取り組みます。
2024年12月には、SCG傘下のThe Concrete Products and Aggregate Co., Ltd.(CPAC)と、3Dプリンター専用モルタルの供給に関する基本合意書を締結しました。この合意により、グローバルな市場での素材調達体制を整えることができ、現在の業務提携はその道筋をさらに広げています。
技術協力による未来展望
今後は、SCGの専門チームとセレンディクスのエンジニアが協力し、日本の多様な気候条件に適応した高品質でコストパフォーマンスに優れたモルタルの開発に力を入れます。特に、環境対応においては、モルタルの生成過程でのCO2削減や、解体時に発生する粉塵や廃棄物の削減を実現するための素材開発が進められます。これにより、将来的にはカーボンクレジットの活用も視野に入れつつ、持続可能な建設を実現していく方針です。
また、営業面での連携を強化し、両社の販売ネットワークを拡張する計画もあります。これにより、日本国内だけでなく、海外市場でも展開できる体制を築くことを目指しています。
セレンディクスとSCGのビジョン
SCGのスラチャイ・ニムラオー氏は、セレンディクスとの協力を通じて、住宅建設の新たな時代へとシフトする重要な転換点であると述べました。この協力関係は、SCGが奨励するグリーンコンストラクションの目標とも一致しており、地域における持続可能な建設のエコシステムの構築に貢献することを期待されています。
一方、セレンディクスの小間裕康CEOも、この提携により「高品質かつ低価格な住宅」が実現に向けて大きな前進を遂げたと語ります。3Dプリンター建築のコア技術の一環としての素材開発は、今後の成長に欠かせない要素です。
セレンディクスとSCG、共に持続可能な未来を目指して
セレンディクスは、日本初の3Dプリンター住宅メーカーとして、今後も革新を続けていきます。2024年には石川県珠洲市に「serendix50」という住宅の第1号棟を建築する予定であり、さらにウクライナの復興住宅建設に関する覚書を現地の企業と締結しています。加えて、JR西日本グループとの資本業務提携により、駅舎を3Dプリンターで建設するプロジェクトに取り組むなど、新しい事業展開にも挑戦しています。
このように、セレンディクスとSCGの提携は、未来の建設業界に大きな影響を与えることが期待されており、持続可能な社会の実現に向けて一歩を踏み出しています。