希少遺伝性網膜疾患Malattia Leventineseの研究成果
近年、希少な遺伝性網膜疾患であるMalattia Leventinese(MAL)に関する研究が注目を集めています。京都大学と慶應義塾大学の共同研究チームは、iPS細胞を活用することでこの疾病の病態を新たに解明し、治療の可能性を示しました。この研究成果は、2026年7月22日に国際学術誌「JCI Insight」に掲載されました。
MALとはどんな疾患か
MALは、EFEMP1遺伝子の変異によって発症する遺伝性の網膜疾患です。発症は思春期頃から始まり、網膜下にはドルーゼンと呼ばれる沈着物が形成されます。このドルーゼンが進行すると視力低下を引き起こす要因となります。MALの病態は比較的まれではありますが、加齢黄斑変性と共通した特徴を持っているため、研究は重要です。
研究の背景と目的
これまでの研究では、変異EFEMP1遺伝子から産生されるFibulin-3タンパク質が細胞内に蓄積していることがわかっていましたが、ドルーゼン形成や網膜細胞の障害がどのように生じるのかは解明されていませんでした。そこで、研究グループは患者由来のiPS細胞を用いて、そのメカニズムを探ることにしました。
研究手法
研究チームは、MALの患者からiPS細胞を生成し、そこから網膜色素上皮細胞を誘導しました。その結果、患者由来の網膜色素上皮細胞には通常の細胞に比べてFibulin-3やApoEなど、ドルーゼンの成分が異常に蓄積していることがわかりました。さらに、電子顕微鏡による観察では、異常な線維状構造や脂質が確認され、小胞体ストレスの亢進や細胞死が見られました。
リソソーム機能の重要性
研究を進める中で、細胞内で不要物を分解する役割を持つリソソームの機能が低下していることが判明しました。リソソームの機能を回復させることができれば、ドルーゼンの形成や細胞死が抑制されるのではないかと考えられ、トレハロースという物質を投与する実験を行いました。トレハロースの投与により、リソソームの機能が回復し、ドルーゼン様沈着物の形成や細胞死が抑制されることで、新たな治療法の可能性が見えてきました。
研究の今後の展望
この研究成果により、リソソーム機能障害がMALにおいて中心的な役割を果たしていることが示されました。この知見は、MALだけでなく、加齢黄斑変性などドルーゼンを伴う他の網膜疾患においても応用される可能性があります。ただし、現在のところ患者に対する有効性や安全性は検証されておらず、今後はリソソーム機能をターゲットとした治療法の開発に向けた研究が求められます。
研究者のコメント
研究を進めた池田華子教授は、「希少疾患の研究から得られた知見が、より一般的な網膜疾患の理解や新たな治療法の開発につながることを期待しています」と語っています。
まとめ
MALに関するこの研究は、希少疾患の病態を明らかにし、新たな治療戦略への道を切り開く重要な一歩と言えるでしょう。今後の研究の進展が待たれます。