産業保健業務のデジタル化が進まない現状と課題
メディフォン株式会社が発表した調査レポートは、産業保健業務のデジタル化の遅れを明らかにしました。特に、ストレスチェック制度の義務化が施行されてから10年を迎えますが、依然として多くの企業が紙やExcelで管理を続けている実態があり、その進展には疑問が残ります。
調査の背景
この調査は、従業員300名以上の企業に勤務する人事労務担当者115名を対象に実施されました。健康経営への関心が高まる中、企業が直面する健康管理の現状とその課題を把握するため、実施されました。健康経営とは、企業が従業員の健康を重視し、業務の生産性向上を図る経営手法であり、この考え方は経済産業省からも推奨されています。
デジタル化の現状
調査結果によると、勤怠管理や給与処理業務は57.4%、54.8%とデジタル化が進んでいる一方で、健康管理やメンタルヘルス、社内コミュニケーションなど、人の関与が大きい業務に至っては20%未満と、大きな差が見られました。特にメンタルヘルス関連の業務はそうした傾向が顕著で、デジタル化の必要性が浮き彫りになっています。
業務への負担集中
さらに、健康管理業務においては「ストレスチェックの実施・集計」や「健診スケジュール調整」、さらには「健診結果管理」に過剰な負担が集中しており、特にこれらの業務は法律に基づく必須業務でもあるため、特に重要です。調査によると、ストレスチェックの結果集計には44.3%、健診のスケジュール調整が37.4%、そして健診結果の管理には33.0%の負担がかかるとのことでした。
データ活用の遅れ
また、健康管理に関連するデータの活用が限定的であることも指摘されました。健康診断データは傾向分析や面談に使われているものの、ストレスチェックは主に現場での対応に偏ってしまい、データを活かしきれていない状況にあります。プレゼンティーイズムと呼ばれる、出勤しているが実働時間が低下している状態の把握に対する対応も不十分という結果が示されています。
属人化の問題
最近の調査結果では、健康診断やストレスチェックのフォロー体制が属人的であることが明らかになり、各企業の66.5%が個別の対応に依存しているという現実も浮かび上がりました。これにより、健康管理業務が担当者に集中し、業務の属人化が進んでいることが懸念されています。フォローのためのフローやルールが整備されていない企業が多く、業務の効率化が求められています。
課題と今後の展望
ストレスチェック制度は義務化から10年が経過した歴史がありますが、この10年余りの間に業務のデジタル化を進める必要性が高まっています。特に2025年には、さらに小規模事業場にもストレスチェックの実施義務が拡大され、今後ますます多くの人事労務担当者が業務に負担を感じることが予想されます。これに備えて、紙やExcelに依存した運用から脱却し、効率化を図っていくことが求められています。
結論
今回の調査から分かるように、産業保健業務のデジタル化は単なる先進企業だけの課題ではなく、すべての企業での喫緊のテーマです。今こそ健康管理体制を整え、業務の効率化を図るために、産業保健DXの推進を進めていくべき時期です。
詳細な調査結果については、ぜひ調査レポートをご確認ください。