国内初の洋上風力発電施設用TLP型浮体が実海域に設置
株式会社大林組は、青森県下北郡の東通村沖合において、国内で初めてとなるTLP(テンション・レグ・プラットフォーム)型浮体の設置を行い、1年間にわたる挙動観測が開始されました。本プロジェクトは、一般財団法人日本海事協会の船級検査を経ており、信頼性の高い発電技術となることが期待されています。
1. 開発の背景
日本における洋上風力発電は、主に着床式が用いられていますが、これは比較的水深の浅い海域に適した方法です。一方で、日本の海域は水深が深い場所が多く、浮体式の導入が求められています。既存の浮体式技術として、スパー型やセミサブ型がありましたが、動揺の問題や発電効率の低さが課題でした。これに対して、TLP型浮体は動揺が比較的少なく、発電効率の向上が期待されています。
しかし、TLP型は設置が難しく、これまで洋上風力発電の基礎としては実績がありませんでした。それでも、大林組は技術開発に取り組み、2018年には基本設計承認を取得し、技術の成熟を図ってきました。そして、今回の実海域設置に至りました。
2. 実証実験の内容
(1)ハイブリッド構造の採用
TLP型浮体は、アンカーと緊張係留材で結びつくことで安定を保ちます。今回の実証実験では、コスト削減と大量生産を目指し、鉄筋コンクリートと鋼製部材のハイブリッド構造を採用しました。さらに、低クリープ高強度の合成繊維ロープを使用しており、TLP型浮体との適合性を確認しています。
(2)設置方法の確立
設置時に一時的な不安定さが課題でしたが、大林組は特許出願中の独自の手法を用いて安定した設置を実現しました。この方法により、大型船の使用を回避できたことも大きな成果です。
(3)構造妥当性の検証
実海域での1年間の観測を通じて動揺や水密性の確認を行い、TLP型浮体の耐用性を検証します。これにより、本技術の実用化へ向けた重要なデータが得られます。
3. 今後の展望
今回の浮体には風車が搭載されていませんが、今後は風車を装備した試験が行われ、商用化へ向けた開発を進める計画です。大林組は2030年以降のTLP型洋上風力発電の社会実装を目指し、技術開発を進めるとともに、再生可能エネルギーの普及にも貢献していく方針です。
このような取り組みは、カーボンニュートラル社会の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。再生可能エネルギーの拡大を通じて、持続可能な未来への道筋を描いていくことが求められています。