新潮新人賞受賞作品
2025-10-03 15:24:23

新潮新人賞に輝く、内田ミチルさんと有賀未来さんの作品紹介

新潮新人賞受賞作品の詳細



2023年10月7日、新潮新人賞の第57回受賞者が発表されました。今年の栄冠を手にしたのは、広島県出身の内田ミチルさんと、現役高校生の有賀未来さんです。彼らの受賞作はそれぞれ、内田氏の「赤いベスト」と有賀氏の「あなたが走ったことないような坂道」で、純文学の新しい風を感じさせる作品です。

内田ミチル「赤いベスト」



内田ミチルさんの「赤いベスト」は、認知症の母親が行方不明となってからの日常を描いた物語です。主人公・跡野は、デイサービスの介助を受けながら孤独な生活を送り、地域で流れる「赤いベストを着た女」の噂に心を悩ませます。この作品では、高齢者たちの集団心理や、不信感、恐怖といった人間の本質に迫るテーマが扱われています。

内田氏の表現力は、特に広島の方言を用いた描写が光り、地域特有の雰囲気を見事に引き出しています。選考委員の中澤信亮氏は、彼女の文章に対する評価をこう述べています。「人間の存在感の凄味や恐怖を感じさせる非常に鋭敏な精神が全篇に流れている」と、その独自性や深みを高く評価しました。

有賀未来「あなたが走ったことないような坂道」



一方、有賀未来さんの作品「あなたが走ったことないような坂道」は、香港出身の日系の高校生、星瑤(シンユ)が主役です。彼女は自らのアイデンティティや、母親に対する想い、親友への淡い恋心など、さまざまな葛藤を抱えています。作品の文体には、読点でつながれた独特なリズムがあり、星瑤の混乱した心情が巧みに表現されています。

この作品に対する金原ひとみ氏の評価では、「句点で閉じない文章が、主人公の思いの積み重ねを余すことなく表現している」と、その才能を賞賛しています。若き高校生の内面的な揺らぎを描くことで、読者に深く響く作品に仕上がっています。

発売される「新潮」11月号



受賞作2篇の全文や受賞者のインタビューは、10月7日発売の「新潮」11月号に掲載されます。この号には、村上春樹氏の最新作「夏帆とシロアリの女王」や、名作家同士の初対談など、多彩な内容が盛り込まれています。今回の受賞者や作品について知りたい方は、ぜひ手に取ってみてください。

受賞者プロフィール



  • - 内田ミチル
- 生年: 1987年4月
- 出身: 広島県
- 学歴: 東京学芸大学卒業
- 職業: 相談援助職

  • - 有賀未来
- 生年: 2007年7月
- 出身: 東京都
- 職業: 高校三年生

新潮新人賞は純文学作家を数多く輩出してきた賞であり、応募総数は2683作に及びました。今年の受賞者が生み出す新たな文学が、どのように読者の心を捉えていくのか、今から楽しみです。

今後も、日本文学の新しい一ページを創り出す若い才能に注目していきたいと思います。


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会社情報

会社名
株式会社新潮社
住所
東京都新宿区矢来町71
電話番号
03-3266-5220

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