日本初のヤングケアラー支援条例から3年
埼玉県の入間市では、全国で最初となるヤングケアラー支援条例が施行されてから3年が経過しました。この市は、11月26日に全国の自治体関係者や支援者向けにシンポジウムを開催し、これまでの成果と今後の方針を発信します。子どもたちの未来を守るために、入間市が描く『次の一手』とはどのようなものでしょうか。
背景としての社会課題
令和6年6月より改正された「こども・若者育成支援推進法」によって、ヤングケアラーは法的に支援対象と位置づけられることとなりました。少子高齢化や核家族化、共働き家庭の増加に伴い、家族のケアを担う子どもたちがますます増えると予想されます。
入間市は、令和3年7月に市内の小中高校生を対象に実態調査を実施しました。その結果、ヤングケアラーと認識される子どもは、小学生で5.7%、中学生で4.1%、高校生で4.8%に達すると判明。つまり、約20人に1人の子どもが、大人が担うべき役割を負っていることになります。この現実に直面した入間市は、その解決に向けた具体的な行動を起こしました。
具体的な取り組み内容
入間市は、令和4年にヤングケアラーに特化した支援条例を施行。その中で市の責務や、関係機関の役割を明確にし、地域全体で子どもを支える環境作りを目指しています。具体的な施策には、以下のようなものがあります。
ヤングケアラーヘルパー派遣事業
ヤングケアラーの家庭に、週2回1回2時間までの形式でヘルパーを派遣し、家事や介護、学習支援など多様なサポートを提供しています。
コーディネーターの配置
専属のコーディネーターを配置し、行政や学校、地域住民が連携して、切れ目のない支援体制を構築しています。
こどもたちが描くニーズ
実態調査で明らかになったニーズには、「学習のサポート」、「相談可能な場」の確保、「見守り役」、「自分の時間を持つこと」、さらには「将来についての相談」などが挙げられています。入間市がこれらのニーズに応えることで、子どもたちの権利が守られ、健やかな成長が促進されています。
特に、ヤングケアラーの一人である中学生の発言が印象的です。彼は「もう一人の自分がほしい」と語り、家庭内での責任を感じつつも、自由が取れない現実を打ち明けました。この声を受け、行政はどのような支援ができるのか、引き続き検討が求められます。
未来のシンポジウムに向けた思い
入間市では、2025年11月26日に「全国ヤングケアラー支援シンポジウム2025 from入間」を開催します。ここでは、これまでの取り組みから得られた知見を関係者と共有し、共に支援の輪を広げることを目指しています。このシンポジウムは、全国の自治体にとって重要な情報交換の場となることでしょう。
入間市長の杉島理一郎氏は、子どもたちの声に応えるべく、行政の役割を強く意識してきたと語ります。特に、支援が届いていない子どもたちがいることを忘れず、さらなる一歩を踏み出す決意を示しています。入間市の挑戦は、全国に広がる支援のモデルケースとして、多くの注目を集めています。
こどもたちの明るい未来へ向けて
入間市の取り組みは、ゆくゆくは全国に及ぶ支援の流れを創出し、子どもたちが本来の生活を送れるよう助ける基盤となることを期待されています。入間市がこれからも子どもたちと共に歩んでいく姿勢は、社会全体にとっての希望の象徴であると言えるでしょう。