DX推進を加速する花王の挑戦
花王株式会社は、全社員約30,000人を対象とした新たなDX(デジタルトランスフォーメーション)人財育成プログラム「DXアドベンチャープログラム」をスタートした。このプログラムは、インターネットを活用した学びを軸にした社会改革を目指す株式会社Schoo(スクー)の協力のもと、体系的な学習環境の整備を行うものである。
プログラムの背景
花王は、中期経営計画の中で「社員活力の最大化」を重要な方針として掲げ、その実現に向けてDXを用いた業務の高みを目指している。また、DX人財の育成も重要な取り組みとして位置付けており、「DXアドベンチャープログラム」がその一環として展開されている。
このプログラムが開始されたのは2023年で、すでに基礎コースの修了者が14,000人を超え、組織全体での意識改革およびスキル向上に寄与している。特に、花王は「公平・絶対・多様自律」という人材育成方針を掲げており、全社一律ではなく、個々の社員に合わせた学習を重視している点が注目される。
スクーとの連携
スクーは、ビジネススキルやコミュニケーション能力、リベラルアーツに関連する8,500本以上の動画コンテンツを提供しており、企業内での自発的な人材育成や学習文化の醸成をサポートする。
花王のDXアドベンチャープログラムでは、「DX Beginner」コースを全社員に必須受講としており、さらに部門ごとに特化した「DX Intermediate」コースも用意されている。これにより、多様なニーズに応じた実践的な学びを提供し、DXスキルの向上を目指している。また、受講前には「DXスキル診断」を実施し、各社員のスキルを可視化することで、それぞれに最適な学びを提供する仕組みも整えている。
研修の効果
全社員が一律にアクセスできる学習環境が整備されたことで、プログラム開始からの1年間に、基礎コースの修了者は14,000名以上に達した。また、基礎コースを修了した後の多くの社員が次の「DX Intermediate」に進むなど、学びの波が広がっている。特に83%の社員がプログラム以外のコンテンツも自主的に受講し、自発的な学びが社内で浸透していることが伺える。
自己開発の促進
オンライン学習の柔軟性を活かし、社員一人ひとりが時間や場所を問わずに学び続けることのできる環境が整ったことで、自己開発にも積極的に取り組む姿勢が見られる。
自己開発とは、自らの人生の目標や価値観を見つめ直し、自身の潜在能力を引き出すスキルや資質を高める行為を指す。花王ではこの自己開発の意識を醸成することも重要視している。
DXスキル診断の導入
今回のプログラムにおける「DXスキル診断」は、経済産業省のデジタルスキル標準に基づいて、全100問の質問を通じて個人および組織全体のDXスキルを可視化するものである。この診断を通じて、現在のスキルの把握や改善点を明確にし、組織の長期的な改革を進めるための貴重なデータを得ることができる。
まとめ
花王のDXアドベンチャープログラムは、筒井省の取り組む教育改革の一環として、社員全体のスキル向上を目指している。スクーとの連携により、個々の社員が自らのプランを立て、自発的に学びを深める文化が形成されつつある。今後、花王がどのようにDX人財を育成し、企業としての競争力を高めていくのか、その動向がますます注目される。