老化の連鎖を制御するPPARの発見：美肌への新たな道

老化の連鎖を制御するPPARの発見

大正製薬株式会社が肌老化を防ぐ新しい可能性を示す研究成果を発表しました。この研究は、老化を加速させる要因であるSASP（細胞老化関連分泌形質）を抑制する因子PPAR（ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター）に関するもので、2025年8月16日から17日に開催された第43回日本美容皮膚科学会総会・学術大会で発表されました。

研究の背景

大正製薬は老化を制御するために細胞レベルでの研究を進めています。先行研究から、細胞内の酵素Mitochondrial Ubiquitin Ligase（マイトリガーゼ）が減少することが細胞の老化を引き起こすことが分かっており、これが肌の乾燥やシミの原因になるとされています。また、老化した細胞はSASP因子と呼ばれる生理活性物質を分泌し、それが周囲の細胞の老化を引き起こす連鎖が生じることも特定されています。

SASP抑制因子の発見

研究の結果、老化細胞が引き起こす悪影響を抑制するためには、周囲に老化を引き起こすSASPの抑制が重要であることが明らかになりました。ここで特定されたのがPPARという因子です。PPARは細胞内に存在し、細胞の代謝や分化に関与する核内受容体で、特にSASP因子の一つであるIL-6の発現上昇を抑制する能力があることが示されました。

SASPの影響を抑制する実験

実際に、大正製薬は老化表皮モデルを使用して、PPARの活性化が老化細胞による影響を抑制するかどうかを検討しました。実験の結果、PPARを活性化することで、老化によって引き起こされる表皮の荒れやバリア機能の低下が抑えられることが確認されました。加えて、老化マーカーの発現も抑制されることが分かりました。

今後の展望

老化はマイトリガーゼの減少に伴い進行し、老化細胞は悪影響を周囲に及ぼします。大正製薬の研究により、PPARを活性化しSASPを抑制することで、老化細胞の引き起こす変化を抑制できることが明らかになりました。これにより、肌の老化を根本から制御し、若々しい肌を保つための新たなアプローチが期待されています。

私たち大正製薬は、健康で美しい肌を求める方々に向けて、先端的な美容研究を続け、その成果を皆様に届けていく所存です。

用語説明

1. SASP（細胞老化関連分泌形質）：老化細胞が分泌する炎症性サイトカインや増殖因子などの生理活性物質。
2. PPAR（ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター）：細胞内代謝や細胞の分化に関与する核内受容体です。

この研究は、美容業界だけでなく、幅広い分野における老化研究に貢献することでしょう。