ASMR体験が自然映像よりも心地よい理由を学際的に解明
近年、ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)は多くの人々に人気を集め、その効能についての研究も進んでいます。今回、ASMR体験に関する興味深い研究結果が発表されました。中京大学大学院心理学研究科の寳﨑大悟氏と指導教員の近藤洋史教授が、東京大学の江崎貴裕特任講師及びイギリスのサセックス大学のGiulia Poerio准教授との共同研究を通じて、ASMR動画が自然環境映像よりも人々にリラックス効果をもたらすことを明らかにしました。
ASMR体験とは何か?
ASMRとは、特定の視聴覚情報により生じる心地よい感覚のことを指し、一般的には頭皮や耳の周辺、首筋にゾクゾクした感覚を伴います。この表現には多くの個人差があり、好まれるASMR動画のスタイルも千差万別です。しかし、多くの人々がこの体験により安心感やリラクゼーションを得ていることは共通しています。
研究概要と方法
この研究では、65名以上の大学生を対象に、ASMR動画と自然環境映像をそれぞれ視聴してもらい、ゾクゾク感や心地よさをリアルタイムで報告してもらいました。実験は二つの条件下で行われ、参加者は視聴覚条件と聴覚条件に分かれました。その結果、視聴覚条件ではより強いゾクゾク感が誘発されることが示されます。
もう一つの実験では、ASMR動画と自然環境映像をそれぞれ提示し、心地よさについての主観的評価と脈拍数を測定しました。その結果、ASMR動画の条件で顕著な脈拍数の低下が見られ、これは副交感神経の活性化、つまりリラックスしている状態を示しています。
検証された効果と期待される応用
この研究結果は、ASMR体験が自然環境映像に比べてより高いストレス軽減効果を持つことを示しています。心理的な心地よさは自然環境映像の方が高いものの、ASMR動画は副交感神経系を強く活性化させ、リラックス状態を促すことが分かりました。これにより、ASMRがうつ症状や不眠症などの改善にも寄与する可能性が示唆されています。
社会的毛繕い仮説に基づくと、ASMR体験は他者との身体的な接触から生じる安心感とも関連があり、今後はその情動反応をさらに深く理解することが求められます。それによって、ASMRを活用したストレス管理やメンタルヘルス改善のプログラムが開発されることを期待しているのです。
結論
ASMR体験はただのリラクゼーションを超えて、多くの実用的な応用可能性を持っています。今後の研究を通じて、この心地よさのメカニズムがさらに解明されることを期待するとともに、ストレスの多い現代社会においてASMRが新たなメンタルヘルスのツールとして位置づけられることが望まれます。
この研究は「Neuroscience of Consciousness」のオンライン版に掲載される予定であり、さらなる注目を集めることでしょう。