新作小説発売
2025-03-26 11:25:50

医師の奮闘を描く朝比奈秋の新作『受け手のいない祈り』が発売

2023年3月26日、芥川賞を受賞した作家・朝比奈秋の新たな小説『受け手のいない祈り』が堂々の刊行を迎えました。朝比奈氏は、デビュー以来その驚きの創造性で注目されており、2022年に発表した『サンショウウオの四十九日』での成功がその実力を証明しています。この作品では、結合双生児の姉妹を主人公にその複雑な心理描写を描き出し、読者からは高評価を得たことが記憶に新しいです。

新作『受け手のいない祈り』は、その前作の発表から少し遅れた2023年秋に書かれたもので、勤務医としての経験に基づく生々しい医療現場の描写が特徴です。著者自身の体験を活かし、医療従事者の過酷な現実と、命を救うことへの揺るぎない決意が重なり合った作品が綴られています。読者を一瞬にして引き込むこの小説は、医療の裏側で何が起こっているのかを明らかにし、多くの人々の心に響く内容となっています。

物語の舞台は、大阪近郊の総合病院。青年医師である公河(きみかわ)が、同期の医師の過労死を知りつつ、次々と運び込まれる感染症患者たちに直面する姿が描かれます。彼の院是は『誰の命も見捨てない』というものであり、過酷な勤務を強いられる中で、彼自身と周囲の医師たちの精神的、身体的限界が試され続けます。彼らは、命を救うために尽力しつつも、自らの心を蝕まれる葛藤に向き合わなければなりません。

公河たちが徹夜で治療や手術を行い、時には70時間を超える連続勤務に従事する姿は、現実の医療現場の厳しさを如実に物語っています。患者の命は救われ日常を取り戻していくが、自身の心身は破壊的な状況に置かれ、「我々の命だけは見捨てられるのか」という問いが常に頭をよぎります。この複雑な内面世界を予感させる描写は、驚異的な想像力を持つ朝比奈氏ならではのものであり、医学というテーマに新たな視点を提供しています。

本作は、文芸誌に掲載されるや否や話題を呼び、今期の芥川賞候補とも騒がれていました。その後、大幅な加筆と改稿を施した上での発売となる今回、朝比奈氏自身がその作品に込めた思いを語っています。「あの期間、おそらく世界で一番働いた。医師時代の過酷な勤務から生まれたこの小説を、読んでいただければ嬉しいです」と彼女は述べました。

また、本書は文化や社会についても深く考察する内容です。現代医療の進展とそれに伴う医師たちの苦悩、協力体制の必要性についても触れており、単なるフィクションを超えたリアリティを読者に提供します。

この作品が、医療の現実に目を向けるきっかけとなり、多くの人に読まれることを願ってやみません。医務・看護の道を志す人々も必読の一冊です。出発点となるこの小説ブームに、ぜひご注目ください。


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