高齢者医療とコロナ禍:受診控えの実態
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が長引く中、特に高齢者が医療機関を受診することに対して控えが見られるようになりました。この現象は、将来的な健康リスクや医療費の増加をもたらす可能性があり、特に後期高齢者にとって重要な問題です。近年発表された研究は、189万人の後期高齢者医療制度に加入している高齢者のビッグデータを基に、高齢者の受診行動を分析しています。
研究の背景
長期化するコロナ禍の中で、高齢者が医療サービスをどのように利用しているのかを明らかにする目的でこの研究は実施されました。具体的には、過去1億9千万件の医療レセプトと所得情報を結合し、高齢者の医療サービス利用状況を分析しています。この研究により、まん延防止等重点措置が行われた時期の外来受診の傾向などが評価されています。
調査結果の概要
研究の結果、以下のことが結論として示されました:
1.
受診控えの実態: まん延防止等重点措置が講じられた最中でも、高齢者の外来受診はわずかに減少したものの、その減少幅は0.73%ポイントと軽微であったため、医療費には大きな変動が見られませんでした。これは、対象者が必須とされる医療サービスをやめることなく、必要な医療を受けていることを示しています。
2.
医療アクセスの公平性: 研究によれば、歯科以外の医療サービスの利用状況には所得による顕著な差はなく、国民皆保険制度が機能し、公平に医療アクセスが確保されていることが示されました。しかし、歯科に関しては、低所得層において受診控えが顕著であるという結果が浮かび上がりました。
3.
収束期における明らかな課題: 研究の貢献として、パンデミック後期における日本の高齢者の医療サービス利用が、特に国際的な視点から重要な知見を提供するものであるとされています。高齢化が進む日本の姿は、他国にとっても貴重な教訓となるでしょう。また、公衆衛生上の危機や自然災害に際しても、同様の分析が必要であることを示唆しています。
鍵となる知見と社会的影響
本研究から得られる影響を考えると、特に以下の3点が重要です:
- - コロナ禍の持続的影響による「パンデミック疲労」に対する対策として、安全性を強化しながらも柔軟な医療提供を行うことが重要です。
- - 国民皆保険制度が持つ、公平に必要な医療サービスへのアクセスを担保する役割が再認識されるべきです。
- - 高齢者やリスクの高い人々に対する医療サービス利用状況を平常時からモニタリングし、有事の際には迅速に対応できるような体制の構築が求められます。
まとめ
新型コロナウイルスという未曾有の危機の中、高齢者がいかにして医療サービスを利用し、またその裏側には様々な社会的格差が存在することが浮き彫りになりました。本研究の成果を踏まえ、今後の医療政策や制度の再考が必要不可欠です。政府や医療機関は、感染症のみならず日常生活における医療アクセスの実現に向けた具体策を打ち出すことが強く求められています。コロナ禍の教訓を経て、より良い医療環境を構築することこそ、国全体の責務であるといえるでしょう。