デジタルが高齢者を支える
2026-03-25 10:33:35

高齢者の歩行量を増やすデジタルピアサポートの可能性

高齢者の歩行量を増やすデジタルピアサポートの可能性



最近の研究によると、高齢者の身体活動を促進するために、スマートフォンの使用が新たな鍵になることが判明しました。特に、千葉大学の中込敦士准教授を中心とした研究チームが発表した成果は注目に値します。この研究では、高齢者向けのスマートフォン講座に、仲間同士の励ましを促すデジタルピアサポートアプリを組み合わせた結果、参加者の歩行量が有意に増加したことが示されました。

研究の背景



高齢期における身体活動の低下がもたらすリスクは、慢性疾患や生活機能の低下、さらには生活の質(QOL)にも影響を与えます。このため、自治体が推進する歩行促進事業は重要ですが、参加者の歩行時間がわずかに増加するだけでは、十分な効果が得られませんでした。特に、「健康日本21(第3次)」では、ICTやアプリを活用した健康づくり施策の重要性が強調されています。

行動科学や社会疫学では、ピアサポートが行動の持続に与えるポジティブな影響が認識されています。しかし、デジタルピアサポートアプローチを組み込んだスマホ講座による効果を検証した研究はこれまで存在していませんでした。そこで本研究では、実際の効果を無作為化比較試験を通じて検証することにしました。

研究成果のポイント



この研究では、墨田区および千葉市に在住する60歳以上の高齢者156人を対象に、クラスター無作為化比較試験を行いました。研究の結果、以下のような重要な成果が得られました。

1. デジタルピアサポートアプリを使用したグループでは、12週後に1日平均歩数が579歩増加しました。
2. 身体活動量における自己申告の歩行時間には有意な差はなかったものの、スマートフォンを「ほぼ毎日利用する」高齢者の割合が有意に増加しました(オッズ比4.1倍)。
3. 利用目的に関する平均値も増加し、とりわけ80歳以上の高齢者には顕著な効果が見られました。

これらの結果は、デジタルピアサポートの効果が期待できることを示唆しています。

研究者のコメント



中込准教授は「高齢者のデジタルデバイドが解消されることが、地域介護予防や地域作りにおいて極めて重要です。今後はこの成果を基に、さらに長期的な介入効果とデジタル活用の普及を検討していきたいと思います」と述べています。その上で、今後検討すべき点として、サンプル数の不足や参加者の欠測データ、都市部ではなく地方への展開の慎重性、そして介入期間の短さが指摘されています。

用語解説



ピアサポート


年齢や立場が近い同士が、お互いに支え合う方法。この研究ではアプリを使って歩数目標を共有し、互いに励まし合う仕組みを活用しました。

健康日本21


日本政府が推進する国民健康づくりのための基本計画で、2024年4月から実施されます。ICTやデジタル技術を活用した健康づくり施策が重視されています。

無作為化比較試験


介入群と対照群を無作為に割り当てて結果を比較する研究手法。個別ではなく、グループ単位で行われます。

本研究はエーテンラボ株式会社からの資金提供を受けており、研究の設計や解析には関与していません。今後、高齢者の健康づくりに向けた新たな施策として、このモデルの普及が期待されます。


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会社情報

会社名
国立大学法人千葉大学
住所
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33 
電話番号
043-251-1111

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