日本におけるデス・リテラシー尺度の開発とその意義とは
近年、千葉大学予防医学センターの河口謙二郎特任助教と北海道大学大学院医学研究院の黒鳥偉作助教らの研究チームが、日本に特化した「デス・リテラシー尺度」の日本語版を開発しました。この尺度は、終末期や死に関する知識と行動能力を測る新たな指標です。
デス・リテラシーとは
「デス・リテラシー」とは、終末期や死に関連したケアに関する情報にアクセスし、理解を深め、適切な意思決定を行う能力を指します。この概念には、コミュニケーションスキルや身体的介護技術など、実践的な知識が含まれます。
注目すべきは反映される要素が、「経験から得られる知識」や地域における支援に関する知識などまで広がっており、死というテーマについて多面的な理解が求められるという点です。
研究背景と課題
現在、日本社会は急速に超高齢化が進行し、死亡者数が増加する「多死社会」に直面しています。病院での治療から、地域や在宅での看取りが推奨されるようになり算出されるデス・リテラシーが求められていますが、実際に地域社会がどれだけ対応できているかは不透明でした。
これまでの調査では、日本のデス・リテラシーの平均スコアが10点満点中でたった3.82点に留まっていることが明らかになり、イギリスやスウェーデンなどの先進国と比較しても低い水準であることが指摘されています。
DLI-J・DLI-J-9の開発
研究チームは、日本の文化や実情にあった意味を持つ指標を作成し、西洋の基準に裾野を広げました。具体的には、従来の指標にあたる「注射の投与」を「投薬管理や軟膏塗布」と言い換えるなど、日本特有の事情を反映させました。また、調査の結果、質問項目についても日本人特有の死に関わる経験や知識の傾向を把握できたことは大きな成果と言えます。
トレンドの観察
研究データによると、死亡に伴う「経験から得た知識」のスコアは比較的高いため、自身や身近な人々の死によって形成される個人の学びがあることが示されています。一方で「地域に関する知識」は低いスコアであり、特に地域での支援システムに対する理解不足が浮き彫りになりました。
今後の展望
このデス・リテラシー尺度を活用することによって地域の社会力を向上させ、人生の最期を支える「コンパッション・コミュニティ」の形成に寄与できることが期待されています。実際にこの尺度を用いれば、地域での啓発活動や介護教室の効果を測定する際にも活用可能となります。
繰り返しになりますが、死というテーマは避けられがちではありますが、この研究の意義は、地域全体で死を支えるための新しい知識と行動の枠組みを提供している点にあります。
このように、日本におけるデス・リテラシー尺度の発展は、単なる指標ではなく、日本社会でのケアの質を高めるための重要なステップとなるでしょう。今後も、この指標が普及し、日本の地域社会で高齢者やその家族が安心して生活できる支えが一層強化されることが期待されます。