被爆樹木の未来を見つめる
2025年6月23日、株式会社偕成社から新たに発売される書籍『新版 広島の木に会いにいく被爆樹木が見る未来』。著者はドキュメンタリー作家の石田優子さんです。この書籍は、2015年に初版が刊行されて以降、数年を経て改訂が施されることとなりました。購入者は、戦争の記憶を今一度掘り起こす貴重な機会を得ることとなります。
戦争の記憶を語る「被爆樹木」
広島に原爆が投下されたのは1945年8月6日。約14万人の尊い命が失われ、多くの緑も枯れましたが、その中で生き延びた樹木たち、いわゆる「被爆樹木」は現在、わずか159本が広島市に登録されています。これらの木々は単なる植物ではなく、過去を語る「語り部」でもあります。
この書籍では、被爆樹木がどのようにして原爆の影響を受け、どのように生き延びてきたのかの詳細が描かれています。著者の石田は、樹木医の堀口力氏や被爆者の証言をもとに、広島の歴史とともにその木々の物語を語っていきます。特に、被爆樹木の治療や保護活動に取り組んできた堀口氏は、80歳を迎える今もなお、広島の緑を守り続けています。
被爆樹木の見どころと意義
被爆樹木は、爆心地から半径約2メートル内に位置する木々で、今もなおその姿を保っています。木々に付けられたプレートには、それぞれの木の名前や特徴が記されています。一見すると普通の木ですが近づいて見ると、爆心地側の木肌が剥げていたり、根の発達が不均衡だったりと原爆の影響が見て取れます。このような木々は、今や戦争の記憶を未来に伝える重要な存在です。
未来へのメッセージ
本書の中で強調されるのは、被爆樹木が持つ「語り部」としての重要性です。多くの被爆体験者が、被爆樹木の新芽を見たことで「生きる力」を得たと証言しています。このように、木々は今後も次世代に平和の大切さを伝える役割を担っています。巻末には被爆樹木を巡るマップも掲載されており、読者はそれを手に広島の地を訪れて、実際に木々に触れることができるのです。
今後の活動
著者の石田さんは、被爆樹木に関連する映像取材を続けており、6月から8月にかけて広島を訪れる予定です。また、書籍発売に合わせて著者と堀口氏の講演会も行われます。広島の歴史を未来へ紡ぐこの書籍は、ただの記録ではなく、読者に平和への思いを再確認させるものとなるでしょう。
この特別な一冊を通じて、私たちが忘れてはならない記憶と、未来への希望を見つける手助けをしてくれることを期待しています。