70~74歳における医療の窓口負担が示す新しい実態
近年、日本の健康保険制度における70~74歳の医療窓口負担の引き上げ(1割から2割)に関する研究が注目されている。早稲田大学の別所俊一郎教授と京都大学の古村典洋特命准教授によるこの研究は、実際に医療費にどのような影響を与えるのかを2014年4月から2021年まで追跡したものです。この結果、興味深いデータが得られた。
医療費の減少
研究によると、窓口負担が2割であった人々の医療費は、1割負担の人々と比較して、外来で4%、調剤で3~6%、入院で2%それぞれ減少したと言われており、この減少効果は70~74歳の期間中持続したことがわかった。さらに、75歳以降になっても、窓口負担が1割に戻ったにもかかわらず、2割負担を経験した人々の医療費が低い傾向にあるというデータも出ている。
この結果は、窓口負担の引き上げが必ずしも医療制度に大きな影響を与えるわけではなく、受診行動や医療費は患者の習慣によっても影響される可能性があることを示唆している。つまり、個々の患者がどのように受診するかは、医療費に直接的な影響を持つだけではなく、長期的に見てもその傾向が続くことがある。
健康状態への影響
一般的には、窓口負担の増加は受診の抑制につながり、その結果として健康状態の悪化が懸念されている。しかし、この研究では窓口負担を2割に引き上げても健康への悪影響は確認されなかった。この点は非常に重要な示唆をもたらすものであり、例えば、健康保険を設計する際に、負担がどこまで増加することができるのかという議論に一つの基準を提供することにつながります。
習慣の重要性
これまでの研究では、受診行動や医療費は窓口負担だけでなく、患者の習慣にも影響される可能性があることが示されています。ですので、今後の政策においては、こうした患者の習慣や行動を考慮した健康保険制度の設計が求められることになるでしょう。
結論
この研究結果は日本の医療保険制度のあり方に新たな視点を与えています。窓口負担の引き上げが医療費を減少させる一方、健康状態には影響しないという事実は、今後の健康保険制度の議論において重要な位置を占めることになるでしょう。さらなる研究が待たれるところです。