既存マンションの修繕積立金増額問題とその解決策に迫る
既存マンションにおける修繕積立金の増額問題
はじめに
近年、日本では多くのマンションが管理されている中、修繕積立金の増額がさまざまな問題を引き起こしています。特に、経年マンションにおいて「2つの老い」が進行し、建設コストが高騰する中で、今後必要となる修繕費用が従来以上に大きくなる可能性があります。この背景を受け、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(MURC)と大和ライフネクスト株式会社は共同で、修繕積立金の増額に関する合意形成プロセスや資金計画の実態を分析しました。
1. 修繕積立金の増額に関する背景
修繕積立金の設定は、マンション管理の重要な要素です。近年、多くの新築マンションでは「段階増額積立方式」が採用されています。この方式は、一定期間ごとに徴収額を引き上げることが前提となっており、将来的な修繕費用の確保を目的としています。しかし、実際の運用には問題も多く、総会での可決が必要であるため、大幅な引き上げが難しいケースも多発しています。
2. 合意形成プロセスの実態
大和ライフネクストの管理受託物件を対象にした調査結果によると、2018年から2023年の5年間で約6割の管理組合において修繕積立金が増額されたことが確認されました。特に、元々低い水準にあった管理組合では、大きな増額の変動が見られました。しかし、経年によって設定水準が高くなると同時に、増額が難しくなる傾向がみられました。
また、総会での可決が成功した場合、過去の設定水準が低かったために増額が許容されやすかったものと推測されます。逆に否決された場合、最終的な増額幅は提案時の約1割縮小されることが分かりました。
3. 資金計画の状況
さらに、大和ライフネクストが管理する既存マンションの長期修繕計画において、最終年度の収支が黒字となる事例はわずか2割程度でした。この中で、段階増額積立方式を採用している割合は約4割と報告されています。計画期間に必要な修繕費用を適切に予測することは困難であり、特に前半の設定を重視する傾向があることが明らかになりました。このため、実務上は最終年度の収支よりも、初期設定が重要視されがちです。
4. 将来の見通し
国土交通省では、マンション管理計画認定制度の見直しが進められており、段階増額積立方式における適切な引き上げ基準を新たに盛り込む方向での検討が行われています。2024年6月には、これに関する具体的な指針が公表される予定です。これは、マンション管理の課題を解決するための大きな一歩となるでしょう。
5. まとめ
修繕積立金の増額は、多くのマンションで重要な課題となっています。今後、国土交通省の制度改正により、よりスムーズな合意形成や資金計画の実施が求められます。MURCと大和ライフネクストによる分析結果は、マンション管理における制度改革の必要性を示す重要なデータとなっています。今後の動向に注目が必要です。
会社情報
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三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
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- 東京都港区虎ノ門5-11-2オランダヒルズ森タワー
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