江戸時代の伝統的な保存食であるフナズシの製法が再現され、今後の研究の成果が報告される会が開催されます。これまでの研究によると、フナズシは塩とデンプンを用いた乳酸発酵食で、魚を苦味と共に保存する方法として位置づけられています。
平安時代から存在していたフナズシは、他の地域の漬け魚とも異なる独自の製法があり、さまざまな歴史的背景を持ちながら今に至ります。過去には、篠田統氏や石毛直道氏などがその系譜や分布を研究し、日比野光敏氏の分析を通じて1980年代以降、フナズシの重要性が再認識されました。
改めてその江戸時代の製法に焦点を当てた今回のプロジェクトでは、特に『合類日用料理抄』に記されている製法の信ぴょう性についての疑問に答える形で行われました。この本によると、フナズシは旧暦の12月に、塩切せず、寒鮒を使用し、頭を叩き壊した魚を、蒸した糯米の玄米で漬け込み、70日間熟成させるという手法が記されています。
市民からの多くの疑問を受け、共同研究によってその実現可能性を検証することが決まりました。今回の研究は、江戸時代のフナズシの乳酸菌叢や環境を調査し、その位置づけを世界史の中に明確に示そうとする試みでもあります。
この再現プロジェクトは、2019年から2024年までの研究期間の中で、琵琶湖博物館による共同研究として位置づけられ、サントリー文化財団からの助成も受けています。研究の成果を発表するイベントは、2025年3月15日に滋賀県立琵琶湖博物館で開催される予定です。ここでは、研究の進捗や成果が発表されるほか、フナズシを歴史の中でどのように位置づけられるのかを皆で考える貴重な時間となるでしょう。報告会では、以下のプログラムが予定されています。
- - 13:30~14:10 橋本道範(琵琶湖博物館)による「ナレズシ研究の新展開」
- - 14:10~14:50 吉山洋子(龍谷大学農学部)による「江戸時代から現代へフナズシ変遷の秘密を解き明かす」
- - 15:10~15:50 田邊公一(龍谷大学農学部)による「フナズシにおける優占微生物種の検討」
- - 15:50~16:30 柏尾珠紀(琵琶湖博物館)による「フナズシのいま―県民大調査を踏まえて」
- - 16:30~16:50 堀越昌子(滋賀大学)による「総評」
このイベントは、フナズシの歴史的な意義を理解し、今後の可能性を見出す貴重な機会です。来場者の皆さんとともに、フナズシの世界を再発見し、意見交換を行う場として期待されます。