尾道造船と常石造船による新たな取り組み
兵庫県神戸市に本社を持つ尾道造船株式会社と、広島県福山市の常石造船株式会社が手を組んで、42,200トン型ばら積み貨物船「Bingo42」を共同開発しました。これは、両社が抱えていた新船舶開発に関する設計負荷の問題を解決するための試みでもあります。
背景と目的
日本国内の造船所では、基本設計から生産設計まで各社独自に行うため、新しい船舶の開発に多くの設計作業が必要です。そのため、設計負荷が非常に高くなります。特に、代替燃料船への取り組みが求められる今、設計負荷はさらに増すことが予想されています。尾道造船と常石造船は、地理的な近さを生かし、共通の問題意識を持ちながら協力し、開発負荷を軽減しつつ顧客価値を向上させる新たな体制を構築しました。
共同開発の詳細
共同開発の対象となる船型は、両社が製造するハンディーサイズのばら積み貨物船です。お互いの設計・建造実績から得たノウハウやポリシーを共有し、従来の船型からどのように価値を高めるかを慎重に議論しました。船体は全長を3メートル延長し、特に尾道造船の40BCからは積載能力や燃費性能を改善し、常石造船のTESS42からは燃費性能の向上を実現しました。
さらに、燃費性能を高めるために「MT-FAST」という省エネ装置も導入されています。この装置は、プロペラ前方にフィンを取り付けることでエネルギー損失を回収し、燃料を約4%削減する効果があります。加えて、環境規制であるEEDI基準においては35%以上の削減を達成し、メタノール二元燃料化も考慮された設計となっています。
「Bingo42」の命名
共同開発した船舶は、「Beyond Innovation, Navigating Green Ocean」の頭文字を取って「Bingo42」と名付けられました。この名前は、両社が備後地域にあること、そして持続可能な海洋環境への貢献を象徴しています。船の構造設計や建造は各社が行い、コンセプト設計を統一することで市場におけるシェア拡大も目指しています。
カーボンニュートラルへの貢献
現在、カーボンニュートラルへの取り組みが求められる中で、船舶業界でも代替燃料船の研究開発が急務です。この「Bingo42」の開発を契機に、今後も競争力の高い船舶を提供し、業界全体のカーボンニュートラル達成に向けて貢献していく考えです。
コメント
尾道造船の生産本部長、本屋裕之氏は、共同開発が成功したことへの喜びを表明し、「この船型が業界を牽引することを期待しています。今後も協力して技術の向上を目指していきたい」と述べています。一方、常石造船の常務執行役員、西嶋孝典氏は、「EEDI基準を超える削減を達成し、持続可能な未来を実現するための技術革新を進めていきます」と語りました。
このような共同開発の取り組みは、造船業界における新たな基盤を築くものとなるでしょう。今後の展開に注目です。