日本の製造業がAI時代に苦戦する理由
かつては世界で1位を誇っていた日本の製造業が、現在では労働生産性においてOECD加盟国中19位という逆風にさらされています。これは、AI(人工知能)やデジタル技術の導入が進まないうえに、自社全体に展開されないためです。マッキンゼー・アンド・カンパニーが発表した最新のインサイトでは、この問題に対する原因分析と解決策が示されています。
日本製造業の置かれた現状
日本の製造業は長年にわたり、GDPや雇用、研究開発を通じて国内経済を支えてきました。しかし、今やその「稼ぐ力」が大きく変化しています。2000年にはOECDにおいて労働生産性が1位でしたが、2010年、2015年と順位を下げ、2022年には19位まで後退しました。実際、2000年から2024年の間で製造業従事者は約145万人(16%)減少する見込みです。
AIとデジタル技術の活用
マッキンゼーの調査では、世界経済フォーラム(WEF)のグローバル・ライトハウス・ネットワーク(GLN)の拠点におけるAI・デジタルの活用が注目されています。ここでは、デジタル技術を駆使して生産性やコスト、導入リードタイムなどで著しい成果を上げています。例えば、これらの拠点では平均53%もの生産性向上が確認されているのです。
では、なぜ日本にはライトハウス認定の拠点がわずか3つしか存在しないのでしょうか。日本企業は多くの実証実験(PoC)を実施しているにもかかわらず、効果が全社に広がらない構造的な課題があります。
日本企業が抱える課題
主な問題として、AI・デジタルツールの導入自体が目的化したり、成功が他部門に横展開されないことがあります。また、IT部門が主導権を握り、事業側が変革の舵を取っていないことも懸念材料です。さらに、外部ベンダーへの依存や、レガシーシステムが複雑化している点も挙げられます。
これに対し、AI・デジタルツールは実験の域を超え、経営の重要な要素として位置付けられるべきです。例えば、中国では、多くの企業が単発のツール導入を超え、全社的なシステム改革を確実に進めています。Mideaという企業は、その代表例で、AIを経営判断に直接組み込むことで卓越した成果を上げています。
日本企業が次に踏み出すべきステップ
そのため、日本の製造業が進むべき道筋は明白です。成功するための3つの要点が示されています。
1.
価値のあるプロセスにフォーカスする
AIの活用に関しては企業業績に直結する20〜30のコアプロセスに絞り込むことで、財務KPIと業務KPIを結び付けることが重要です。
2.
組織と人材の再編成
IT部門ではなく、事業部門が変革のオーナーシップを持つことで、競争力の源泉となる領域に焦点を当てるべきです。
3.
柔軟でスケーラブルなテクノロジー基盤の構築
レガシーシステムに依存せず、APIやクラウドを活用して中長期的なシステム基盤の標準化を図ることが求められます。
これらの提出された戦略は、日本の製造業が今後のAI・デジタル変革を成功させるために必要不可欠な要素です。特に、「成功事例をつくる」から「横展開可能な企業資産をつくる」というマインドの転換がカギとなります。